スポーツ庁が主導する部活動の地域移行のこれまでの推移を見てきたが、性急感が常に漂っていた。教員に代わる指導者の確保、限られた時間内での指導者の業務量と内容、そして大会の運営など、移行が動き出して最初に直面するであろう課題に対し曖昧な点が多く、「地域任せ」の感が強いからだ。
2017年4月に設置された部活動指導員はその典型である。国の通知文に示された職務内容に対し、勤務時間の範囲で実行することが本当に可能なのだろうか。平日の部活動の時間帯に勤務できる人材の絶対数とそれに対する不足数を補充する見通しやその根拠は。
日本スポーツ協会が21年7月に公表した実態調査結果と合わせてみると不安だけがよぎる。同調査では中学校において部活動指導員を依頼しているのが8.7%の学校にすぎず、部活動指導員に依頼するにあたり課題となったことは、「顧問教員との連携」であり「平日に指導する人材がいないこと」が上位にある。制度開始から4年たった時点での話である。
待遇面も大きな壁となっている。この人手不足の時代に1日2時間、週に3~4日の勤務で日当3000円前後といった条件で来る人間はいるのか。
日本スポーツ協会が設置した相談窓口に寄せられた指導に対する22年度の相談件数が過去最高の290件に上ったことが判明した。相談の6割以上は小中高生で、体罰は減っているが暴言やパワハラは増加傾向だという。指導者は教員だけではない。クラブチームのコーチなども含まれる。円滑な移行になるとは誰もが信じまい。