日本を代表する教育者と新進気鋭のAI研究者が異色のコラボレーション。生命体が生きていくために持つ知であり、力として絶え間なく表出されるもの〝生命知〟を軸に、AI時代だからこその教育の在り方を示す一冊。
全3章に分かれており、第1章では紛争や経済格差、食糧危機といったさまざまな問題に見舞われ、さらにはテクノロジーの進歩によって、自分で考えて行動する機会が奪われることを問題視する。環境だけでなく価値観までもが激しく変化している現代社会を生き抜くために、生命知を正しく理解して発揮することの必要性を説く。一見、抽象的に思えるが、子ネコを利用した実験を紹介したり、グラフを使用したりなど、読者への工夫が凝らされている。
第2章では、これまでの教育は日本国内だけで通じる学力を育てることが目標とされており、試験が終わると役割を終える〝試験のための学び〟と主張。これからの教育として、能動的参加型授業や協働的学び、創造性の創造といったことに重点を置くべきと指摘する。さらには、インプット中心になりやすい基礎学力を見直し、発表や討論のようなアウトプットに時間を割く形式を提案して、時代と共に学校教育の変革も求める。
第3章は改めて生命知をただの理念で終わらせず、生きていくための羅針盤にするための教育の実現を訴える。教育が求められる役割を根底から見直し、取捨選択すべきものまで見えてくるだろう。