いわゆる「日本の学校教育」についての批判がニュースサイトなどで日々展開されている。その趣旨は、日本の学校教育が受験を目的とした教育で、知識技能の習得に偏重した一斉教育であること、個性を伸長させ、クリエーティブでイノベーティブな発想を生むような教育が実現できていないことが指摘される。
対極としては、特別な教育プログラムに基づく国内外の私立学校の教育が言及される。
ご承知の通り、公立の小中高校でも、個人の興味関心を追究し、創造的で革新的な発想を生むような探究学習・課題研究を活発に展開している。
高校段階の課題研究は、科学技術の革新、商品開発や地域創生につながるものなどがあり、進学校のみならず、普通高校や職業高校でも取り組みが進んでいる。特に、スーパーサイエンスハイスクールでの研究は、大学の研究室における研究活動の前倒しとも言え、科学技術力の向上に大いに貢献するであろう。
しかしながら、現状の探究学習・課題研究には課題も存在する。小中高校段階で探究学習の連続性がない。児童生徒が興味関心を持って探究しても進学するとまたやり直しとなる。学校教員も指導方法に戸惑いがある。教員養成課程において新設された「総合的な探究の時間の指導法」は、体験や調査、実験や観察活動を取り入れながら指導法を学ぶ時間になっているとは言い難い。
宮城教育大学の田端健人研究室では、2022年度の「全国学力・学習状況調査」(小学6年生・中学3年生対象)について、長年ESDや探究学習に力を入れている市町村のデータを分析した。その結果、探究学習が学力および非認知能力と相関を示すことが明らかになった。
ただ、教科の学力としての国語の学力とは相関を示すが、算数・数学の学力とは結び付かなかった。
小中学校段階の探究学習では、調査や発表を通して読解力や表現力を伸ばすが、数的処理能力や科学的な見方や手法を導入できていないことの証しである。今後は、小中学校の探究学習に教科につながる数的処理方法や科学的な手法をもっと取り入れ、高校段階の課題研究と連接を図っていくことができれば、公教育が真に創造的で革新的な発想を生む教育につながるのではないか。