2022年に生まれた子供の数が初めて80万人を割り、わが国は超少子化時代への歩みが加速している。これに対し岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」を打ち出した。
「異次元」という言葉に期待したが中身を見て失望した。内容は、児童手当など経済的支援の強化、学童保育や病児保育・産後ケアなどの支援拡充、男性の育児休業の取得率向上などを狙った働き方改革推進からなっている。要は出産率向上とともに乳幼児を抱える子育て家庭への支援にほかならない。
そんな折、参議院予算委員会で東京大学の本田由紀教授が子育て家庭への支援のほか「正規教員の増員と少人数学級によるきめ細かい公教育の実現」と「学校歴社会から学習歴社会への転換」が少子化社会の対策となることを提示した。正鵠を射たものであろう。
親の手をある程度離れた後の学校での学習の場は人間形成の基礎を培う大切な時期である。だからこそ文科省は答申などで「令和の日本型学校教育」として「個別最適な学び」と「協働的な学び」をうたっている。つまり「主体的・対話的で深い学び」ができる人材、熟考できる人間の存在が今後の持続可能な社会には必要と判断しこの政策を打ち出したのである。
子供の数が減る今こそ、経済的支援とともに、一人一人の個性や能力に合った個別最適・協働的な学びを指導できる環境を整備することで、若い世代に子育てへの安心感を持たせることができるものと確信する。首相は「教育は国家百年の計」と「持続可能な国家」の意味を今一度吟味する必要があるのではないか。