(鉄筆)学習指導要領の改訂……

(鉄筆)学習指導要領の改訂……
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 先日、本紙のインタビューで第12期中教審会長の荒瀬克己氏が学習指導要領の改訂に関し「現行の学習指導要領を大きく変える必要はないと思う」と発言していた。

 氏が言うように現行の学習指導要領前文や2021年答申の趣旨に異論はないが、理念実現のための「各論」となると問題点は多々ある。その一つが最近教育界でよく耳にする「カリキュラム・オーバーロード」である。全国連合小学校長会も昨年12月に文科省に対し「次期学習指導要領改訂を見越した指導内容と指導時数の削減」などの要望書を出している。

 子供の「生きる力」の育成という目標の実現には主体的な学びの力が必要だ。そのため体験や問題解決を核とした学習形態が主流となる。事前の教材研究や事後の評価などのための時間が教師主導型の授業以上に必要となる。

 1998年改訂の学習指導要領が「ゆとり教育」と呼ばれ学力低下を招いた原因の多くは「学習内容の厳選」ではなく、指導法・評価法の研修や持ち時間の軽減など学習形態の転換に対応した授業などの質の転換のための教育環境整備が不足していたからではないか。理念だけ追求し、指導する教員の資質向上や労働環境改善をしてこなかった結果、カリキュラム・オーバーロード問題が発生したと言えよう。

 今後、中教審の審議では荒瀬氏が言うように現行の理念はそのままに理念実現のための条件整備に時間を割いてほしい。シンガポールの教育理念である「教えを少なく、学びを多く」(TLLM)など参考にする事例は世界に数多くある。

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