2020年度から、「通知表」という手段で保護者や子供に評価を伝えることをやめた神奈川県茅ケ崎市立香川小学校。この話題は全国に広く報じられ、ヤフーニュースのコメント欄への書き込みは最大で4000件を超えるほどの反響があった。その香川小学校が通知表をやめて1000日の記録をまとめたのが本書である。
香川小学校がなぜ通知表をやめたのか。それは、教員全員で「何のために通知表を出しているのか」「子供たちの成長のためにどう評価を伝えることがいいのか」を話し合った結果である。日々の業務をこなしながらの話し合い。各学年5、6クラスがある大規模校で教員の数も多い中、一人一人が「評価はどうあるべきか」について正面から向き合い、最終的に学期末の通知表という手段ではなく、その他の手段で子供たちの姿を保護者に伝えていくことを決めた。
通知表をやめて3年目には、20年入学の通知表を知らずに育った1年生が3年生となった。新たに3年の担任となった教員の多くが、「生き生きしている子供が多い」「自己肯定感が高い子供が多い」といった感想を語っている点が印象的である。
現場の教師の戸惑いや個々のチャレンジ、学年ごとの取り組みのほか、保護者アンケートの結果やコメントなどもまとめられている。「何のために通知表を出しているのか」。たとえ答えは出なくても、本書を通じて一度立ち止まって考えてみてはどうだろうか。