本紙電子版7月11日号に千葉県佐倉市教育委員会に勤務していた指導主事の自死に関わる裁判記事が掲載された。指導主事という職業が社会一般に認知されていないこともあり、本紙のような記事が掲載されることはまれである。
月平均の時間外勤務が80時間を優に超え休日出勤の機会も多いが、超勤手当の支給はなく代休は認められても休めばその分の仕事が休み明けに待ち受けている…。こうした指導主事の勤務実態は教員ですら十分知らない。学校に対する教育課程・学習指導に関する指導助言活動が本来業務と言われるが、実際は保護者や地域住民の苦情処理のほか議会対応など多種多様の業務に忙殺され、肉体的にも精神的にも負担の大きい職業だ。教育行政では欠かせない存在でもある。
文科省の「『令和の日本型学校教育』を推進する地方教育行政の充実に向けて」の報告書が公表された。その中で教育行政充実のキーパーソンとして教育長と指導主事を挙げている。現在、教育管理職の資質低下や教員の指導力不足といった課題が指摘されるが、これらを解決するために特に指導主事の育成は最優先課題であり、報告書の指摘は遅過ぎる感すらある。
冒頭の裁判だが、当日には教え子らが多数傍聴したという。亡くなられた元指導主事はさぞかし教員時代も子供たちに慕われた優秀な教員だったのだろう。
学校経営や教員の授業力向上のため、指導主事の存在価値を高めるためにも報告書で述べられたことは即座に実現してもらいたい。何より亡くなられた方への弔いとなるのではないか。