人類にとって命や健康上の課題であったはずの新型コロナウイルス感染症は医療の大混乱にとどまらず、企業活動の停滞、倒産や格差の拡大、オリンピックの延期、教育の混乱など、政治・経済・教育・文化など社会全体をパニックに陥れ、深刻な打撃を与え続けた。
また、地球の温暖化は経済活動などによる温室効果ガス排出量の増加が原因と言われているが、地球沸騰ともいえる異常高温が広がり、農地の砂漠化、山火事や洪水などの多発、台風の巨大化など問題は拡大・深刻化するばかりである。
今や世界における全ての出来事は勝手につながり、互いに影響し合うようになった。極めて短時間に問題を深刻化させ、思いもよらぬ方向から人類に襲い掛かってくるという激変の時代に突入している。
このような時代においては「専門分野の知識に優れただけの人間」では、ほとんど役に立たないのである。
幅広い視野から現状や相互の関係性を見極め、自己の立ち位置を分析し、次に何が起こるのか、何が必要になるのか予測し、自己の専門性を生かすために必要な情報を収集して的確に判断する能力や多様な人々と協働するための表現力や実践力の育成が求められている。
新たな時代を迎え、学校教育も教科・領域ごとに進めてきた学びやその成果を教科等横断的なストーリーの中でつなげ、活用し合えるカリキュラムの構築が求められている。
その優れた一例が全国で多様に活用されている「ESDカレンダー」である。
学年の年間指導計画や教科書にある全ての単元の中から、例えばSDGsに関するものをマーカーで色付けすると教科・領域を超えた学びの広がりやつながりが見えてくる。
その中を環境や人権、多文化の理解などの視点で見ていくと、国語にエシカルな生き方や環境問題を取り上げた説明文が、理科では科学的な探究方法の学びが、社会では地域や世界の見方が、道徳では課題に向き合う際の人としての生き方などが見つかり、いくらでも関連が広がるのである。
これらをどのようにつなげて学びのストーリーがつくれるかは学校やその学年の創造力にかかっている。学びをつなげ、激変の時代を生き抜く人間を育てよう。