少年たちの闇バイトへの関わりが社会問題となっている。高齢者をだましたり殺傷したりすることの罪悪感よりもすぐに手に入る金銭という経済的価値を優先する風潮が少年たちを取り囲もうとしている。
この風潮は現代社会における「承認の欠如」にあるという。承認の欠如とは家族や知人からの暴力・虐待、学校・職場でのいじめや正当な評価を受けないなどの状況を指す。明治大学の宮本真也教授によれば、承認の欠如である最近の社会風潮は「資本主義的な価値観のまん延」、つまり「社会に役立つ人」=「経済的価値を生む人」といった価値観の変化が原因だという。まさに闇バイトはその典型といえよう。
そのSNSを発信するスマホに対し警鐘を鳴らすのが脳科学者だ。闇バイトに見られる少年たちの行動は脳の前頭前野の機能が低下している現象だという。前頭前野は記憶、思考などの認知機能を持ち、感情の抑制、善悪の判断といった理性や道徳性、さらには他人とのコミュニケーションをつかさどる「脳の中の脳」と呼ばれる部位である。
その前頭前野の機能低下をもたらしているのがスマホであると脳科学者の榊浩平氏は指摘する(「スマホはどこまで脳を壊すか」朝日新聞出版)。ゲームやスマホの使い過ぎによる子供の学力低下や健康被害の事例はすでに数多く報告されている。
子供たちに対する接し方とスマホの在り方。急速な社会の変化が子供たちを壊していくことに多くの大人たちは気付いているはずだ。社会全体で早急に対策を講じなければ社会そのものの崩壊が待っている。