教育政策から見た自民党総裁選 教員も注目すべき(鈴木崇弘)

城西国際大学大学院研究科長・特任教授 鈴木 崇弘

 政治とは本当に何が起こるか分からない。菅義偉首相・自民党総裁は、9月3日の党臨時役員会で、再選を目指していた任期満了による総裁選に立候補しないと表明した。これにより、次期総裁は代わることになった。与党自民党の総裁は、現在の政治状況では、首相になると考えられる。そのために自民党総裁選は、1政党の代表者を選ぶ選挙とはいえ、実質上の首相を選出するものだ。

 同選挙には4人の候補者が出馬し、9月17日の所見発表演説会と共同記者会見では、子育て支援や教育政策などについても表明した。

 候補者たちは、新聞やテレビに頻繁に出演・取り上げられ、討論会も開催されている。しかしながら、時節柄、コロナ対策、エネルギー、社会保障、対中国、政治姿勢などを中心に政策議論がなされ、本来は重要な問題・課題である教育問題が取り上げられることはあまりない。

 そこで本稿では、候補者のホームページなどの情報から、教育関連の政策や情報を選び出し、候補者の教育に関する政策や観点を比較検討したい。

4候補の教育政策

 まず岸田文雄氏。同氏は、外務大臣や防衛大臣、自民党政務調査会長などを歴任し、幅広い政策理解があるといえる。同氏は「①コロナ対策」「②成長と分配(新しい日本型資本主義)」「③外交・安全保障政策」の3つの政策の柱を掲げている。

 ①では「子育て世帯・学生などへの給付金支援」、②の中では「子育て世帯の住居費・教育費を支援」「幼稚園教諭、保育士などの公的価格(報酬)の抜本見直し」や「(労働移動の円滑化のための)学び直し支援」、③では「明治以来の一斉授業からICT(通信情報技術)を活用した個別最適な学びへの転換」「取り残さず個々の子供に合った教育実現」「道徳教育や高校の『公共』などで、伝統・文化の継承・発展させ当事者意識の育成」などの教育関連の政策を挙げている。

 河野太郎氏は、外務大臣、防衛大臣、規制改革・行政改革の担当大臣などを経て、現在は新型コロナウイルス感染症ワクチン接種担当大臣である。同氏のホームページでは、「社会保障」「エネルギー」「政治改革」「経済・財政・行革」「外交」「その他」の分類で政策を提案しているが、教育に関する考え方は示されていない。

 しかし、総裁選の所見をまとめた特設サイトでは、「新しい時代のセーフティーネット」として、持続可能な社会保障、子育て支援、教育の拡充を訴えている。また、同氏の最新の著書『日本を前に進める』 (PHP新書)の第7章「必要とされる教育」で、「教育が目指すべきもの」 「英語教育の必要性」 「学び直し」「教育のオンライン化 」「習熟度別の教育の充実」「子どもの貧困をなくす」等について論じている。

 高市早苗氏は、自民党政調会長や総務大臣などを歴任。ホームページでは、具体的政策は示していないが、6つの理念を示し、その中で教育への考え方を示している。

 それらの理念とは、安全確保やリスクの最小化を行い国家の名誉を守り「『大切なものを守り抜ける国』を創る」、時代ニーズに応えられる新憲法の制定で「『今を生きる日本人と次世代への責任』を果たす」、間断のないイノベーションと活発な経済活動が行き渡る「全世代の安心感に繋がる『強靭な経済』を創る」、税制や人材育成策などの再設計を行い「『機会平等』を保障する制度設計に変える」、税や社会保障などの法制度の公正性の担保で「『自立と勤勉の倫理』が重んじられる『公正な社会』を創る」、公徳心・国や郷土愛などを育み、情報リテラシー教育の推進や防災・防犯教育などを進めて「国家の基本である『教育』を立て直す」である。

 野田聖子氏は、郵政大臣、自民党総務会長、総務大臣などを歴任し、現在は自由民主党幹事長代行である。同氏はホームページで、「『政治』の力で、多様性社会というパラダイムシフトを加速」することを前提に、教育に関しては次のようなパラダイムシフトを掲げている。

 子供の性被害や障害児の教育参加を例に挙げ、「立法」で社会を変えるという視点で「『明治の価値観』を立法の力でアップデートしていく」、少子高齢化の視点を変更し「人口減少は女性活躍ではなく『安全保障』の問題ととらえる」、子どもへの投資に力を入れるため、「子ども債」で子ども庁を設立し、子どもを産み育てやすいワンストップの環境を整備する「『子ども対策』は福祉から『最強の成長戦略』へ」という政策だ。

教員や教育関係者も注目すべき

 このように4候補は、教育に対する政策的な強弱や、その視点が国家中心か社会か、多様な個人を中心とするものなのかなど、観点から見ると多種多様であることが分かる。

 つまり、どの候補者が総裁そして首相になるかで、教育の方向性や政策が大きく変わる可能性がある。

 その意味で、教員や教育関係者も、自民党総裁選の動きと結果に注目していくべきだろう。

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