【世界の学校、世界の潮流(6)】教師が大きな裁量を持つフィンランドの教育

Demo代表・教育ファシリテーター 武田 緑
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フィンランドの教育システムの特徴は、なんと言っても「平等」に重きを置いている点にあります。私学はほとんど存在せず、子どもたちは基本的に「地域の公立学校」に通います。

これは、学校の民営化が進むスウェーデンや、各家庭が理念や方法によって学校を選ぶことの多いデンマークとは異なるスタンスです。人種や民族、貧富の差や居住地に関係なく、全ての人が平等に質の高い教育や訓練を受けられるということが重視されているのです。確かに、少なくとも私の出会ったフィンランドの人々は、「僕らの国では、どの地域でも平等な教育が受けられる」という実感を持っているようでした。

もう一つの特徴は、教師の専門性の高さと現場裁量の大きさです。一時期「フィンランドメソッド」として、現地の教育方法が日本でも紹介されましたが、実際にはフィンランドの学校の教室で行われている授業は実にさまざまです。それは、それぞれの教師が、目の前の子どもたちの様子を見ながら、授業の進め方を決めたり変えたりするためです。

私が訪問したある小中一貫校では、授業中、子どもたちが廊下やフリースペースでそれぞれ学習をしていました。このように、フィンランドでは先生からその時間の学習内容について指示を受けた後、子どもたちが校内に散り散りになって自分たちが学びやすいように学ぶというのが日常的な光景となっています。

同時に、日本でもよく目にする、黒板の前で先生が板書をしながら説明し、それを生徒がノートに取りながら聞くというスタイルの授業もあります。また、ワークショップ形式で授業を進めているクラスもあります。

時間割もかなりフレキシブルでした。壁に貼ってあった時間割に×印が付いているところがあったので聞いてみたところ、「×印の時間は、その時の子どもたちの様子やリズムを見て決める」のだと話していました。また、先生の得意・不得意科目によって、隣のクラスと教える授業を交換したり、学習内容によって2クラス合同にしたりということも、気軽に行っているとのことでした。

また、3年生のとあるクラスでは、月曜日の1時間目はクラスの半分の子どもだけが来て算数の授業を受け、残りの子たちは2時間目から登校。水曜日はその逆…という形にすることで、少人数での授業も行っていました。こういった工夫は、調整が必要な部分はあるものの、基本的には担任の先生の一存で決めることができるのだそうです。

現場の裁量が大きいというのは、それだけ教師や学校が社会から信頼されているということでもあります。現場への信頼をベースにした仕組みが好循環を生んでいるフィンランドから、日本が学ぶことは多いと思います。

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