【プロティアン・キャリア教育 (7)】主体性を持って活動する生徒の事例

内田雅和 三田国際学園中学校・高等学校 中学教頭

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 従来のキャリアでは、組織での評価を得ることが最優先とされるため、組織内外で人材が移動する頻度は「低い」のが当たり前でした。一方、プロティアン・キャリアでは「高い」のが特徴です。本校では中学段階で自分なりのアイデンティティーを獲得し、変幻自在なキャリアを意識した生徒が、高校では学校外の企業や団体と自然にコラボレーションするようになりました。

 ある高校3年生の2人は「サステナビリティーを日常に」という目標の下、プロジェクトを始めました。具体的に、日本の一般家庭で廃油が燃えるごみとして9割以上が捨てられている現実に着目しました。また、サステナビリティーをうたっている企業の洗剤はパーム油が使用されていることが多いのですが、パーム油を栽培することで森林伐採や生態系破壊などの問題が起きています。この2つの環境問題を解決するために、洗剤の原料であるパーム油の代替品に、廃油を活用するアイデアを思い付きました。

 2人は廃油を原料とした洗剤を作るために文献を調べ、ネットでリサーチを行い、さまざまな国の動画を確認したところ、カメルーンで廃油由来の洗剤が生成されている動画を探し出します。カメルーンではパーム油搾取が問題になっているため、廃油から洗剤を作るようになったのだと生徒たちは考えました。そして、動画を参考に廃油から洗剤を作る実験を行い、廃油を使った洗剤開発に成功します。

 とはいえ、洗剤を大量に製造・販売するには、プロの技術と大量生産ができる設備がなくてはなりません。そこで、廃油を取り扱う企業や洗剤メーカーに電話をかけたりメールを送ったりするなど、協力を求めました。応じてくれない企業が大半を占めましたが、中には活動に賛同し、廃油10リットルと容器2000個を無償提供してくれる企業がありました。

 そうして生徒たちは、廃油由来の洗剤を多くの人に届けるビジネスモデルにたどり着きました。家庭から出る廃油を回収し、それを元に洗剤を作り、再び各家庭まで宅配するというものです。そこで食材宅配会社に連絡をしたのですが、協力してくれる会社はなかなか見つかりません。しかし、諦めずに探し続けたところ、「ぜひ取り組みをサポートしたい」というメールがオイシックス・ラ・大地から届きました。現在はそのほかに吉川油脂、ヱスケー石鹸などの企業とも連携をして、サービスの実現に向けた生徒たちの挑戦は続いています。こうした実践を通じ、生徒たちの将来の可能性は無限に広がっていくと信じています。

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