【「隠れ教育費」からの問題提起 (4)】給食費

福嶋尚子 千葉工業大学教育センター准教授

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 家庭にとって割安かつ栄養バランスが良く、おいしい。そして、昼食を準備する負担もない。公会計化が進むことで学校にとっても教職員の徴収事務負担が少なく、給食費未納の有無にかかわらず安定的に供給できる。このように、私費負担の中でも抜群に「優等生」だった給食費に、異変が生じている。

 全国一斉休校と同時に、貧困家庭の子にとっては特に重要だった給食が、長いところでは3カ月以上、完全に停止した。すでに支払われていた給食費については返金作業が行われたが、その一方で普段は生活保護や就学援助を利用していた全国143万の世帯に関わっては、給食停止とともに給食費の給付も停止した自治体が7割に上った(道府県庁所在市、政令指定都市、東京23区を対象とした朝日新聞2020年5月30日付の調査結果)。給食費の支給が停止された自治体に住む該当の家庭では、昼食準備の負担だけではなく、想定外の昼食代の負担までも迫られることとなった。

 他方で、自治体によっては、給食費を昼食費に振り替えて支給する、市販品購入を想定して昼食代を上乗せ支給する、使われなかった食材を業者の協力を得て家庭や子ども食堂に配布するなどの工夫が行われた。給食費の無償化を検討・実施した自治体も増えている。

 その後、家庭で十分な食事を取ることができない子どものため、そして一斉休校の際に390億円もの経済的損失を出した給食業界のために、分散登校時に簡易給食を提供する学校もあった。しかし、量が少なく、食の楽しみを感じさせるようなメニューではなかったことから「育ち盛りの子どもたちがかわいそう」などの声がSNSで上がった。感染対策のため配膳を必要とするようなメニューは控えられ、学校給食の取りえだった「栄養バランス」が割を食った格好である。

 さらに22年度は、食材費高騰に伴う給食費値上げの報道が相次いでいる。値上げ分を私費に転嫁している自治体もあれば、公費で予算を確保している自治体もある。あるいはデザートを減らすなどして、給食費を据え置くところもある。文科省はコロナ予算を充てられるように措置している。

 コロナ禍を機に、給食費の扱いを巡る自治体間の格差が大きくなってきている。給食費に関わる制度に影響を与えているのは、自治体の財政力以上に「子どもの食の権利を保障する」という理念を当該自治体が持っているか否かだ。費用負担を負う家庭、徴収を担う教職員、食材調達・調理・配送を担う現場に給食供給の負担を押し付ける自治体では、給食の安定供給は望めない。給食費用を公会計化、そして無償化し、安定供給を進めることができるのは自治体、そして国だけだ。

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