多忙化解消は管理職のスキルアップで 教職員支援機構が研究報告

多忙化解消は管理職のスキルアップで 教職員支援機構が研究報告
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独立行政法人教職員支援機構は3月29日、「調査研究プロジェクト」成果報告会を都内で開催した。校長の資質向上や教員の養成・研修・採用の改善を目的とした調査研究の成果の普及が狙い。校長・教員や教委指導主事ら約200人が参加する中、「教師力を磨く校内研修のあり方」「管理職に求められるタイムマネジメント・スキル」など五つのテーマについて報告があり、意見交換や質疑応答が行われた。國學院大學の田村学教授は「『主体的・対話的で深い学び』を見取り、実現する校内研修」をテーマとした研究の成果を発表。「新しい時代の学びでは、授業研究に対する意識を大きく転換して教師力を磨く必要がある」とした上で、「これまでの授業研究では、参観者は授業者の力量を品定めし、授業者に対して意見や感想を伝える方法がとられていたが、子供が主体となる対話的な学びの実現で目指すべきなのは、参観者が子供の変化を見取って学びを分析する力量を身に付けることだ」と説明。授業者は見取ってほしい学びの姿をあらかじめ明示し、参観者はそれを踏まえて子供の表情や発言、記述を確認しながら、狙いが達成された場合にはその要因を、達成されなかった場合には改善策を分析し、授業後に参観者同士がグループで話し合って考えを深め合う方法が有効だと述べた。進め方の具体例を示す31の研修プログラムモデルを作成したことも併せて報告した。滋賀県教委では研修プログラムをすでに取り入れているといい、平中理恵指導主事が「当初は子供の学びを見取る新しい方法に戸惑う教員もいたが、グループで意見を交わすうちに納得し、趣旨を理解していた」とコメント。東京都奥多摩町立小学校の教諭が「授業研究では1コマだけを切り取って参観するが、実際にはそれ以前の学習とのつながりや、授業後の広がりがある。その点を踏まえた研修プログラムはあるか」と尋ねると、同機構は「一つの単元の中で連続して活用できるプログラムモデルがある」と応じた。31のプログラムモデルと実際に活用した200の事例が同機構のウェブサイトで全て閲覧できるので、活用してほしいと呼び掛けた。「働き方改革時代の管理職に求められるタイムマネジメント・スキル」と題した研究では、東北大学の青木栄一准教授が発表。「学校の多忙化には、日本の教員が教科指導だけにとどまらず、あらゆる業務を引き受けざるを得なかった歴史的経緯がある」とした上で、「多忙化は『教育ムラ』と揶揄(やゆ)される教育界だけでは解決できない」との考えを示し、企業への聞き取りや、英国・フィンランドなど海外視察を実施して研究した成果を報告した。日本の課題として、▽学校管理職にタイムマネジメント・スキルを身に付ける機会がない▽学校管理職は若手教員と比べてストレス耐性が高い「サバイバー」で、耐性の多様性に対する理解が不十分であるために多くを求めてしまう▽教育行政制度が分権的であるために、ICT環境の整備が遅れ、業務の効率化が妨げられる――などがあると指摘した。好事例として札幌市教委が進める働き方改革を挙げ、▽「早く帰ろう」と声掛けするだけではなく、職員朝礼の廃止や行事の削減、週に1度の「午後7時完全施錠」など具体策を取る▽時間外の電話は自動応答で対応する▽「学校マネジメント会議」でタイムマネジメントの現状を分析する――などを紹介。「学校管理職は教育者としてのバックグラウンドだけではなくマネジャーとしての自覚を持ち、学校として果たすべきミッションを明確に設定した上で、ミッション以外の業務を部下にはさせず、ミッションを達成したら退勤させるという姿勢を貫かなければ、教員の多忙は改善できない」と締めくくった。

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