コロナ危機下での教育課題を討論 日本教育学会が座談会

パンデミック(世界的大流行)の中で学びを支えるために、何が必要か――。日本教育学会は6月29日、新型コロナウイルスを契機にした教育課題を討論するオンライン座談会を開いた。9月入学の問題を検討し、慎重な議論を求める提言をまとめた同学会特別委員会のメンバーらが、学力格差への対応や少人数学級の実現など、コロナ危機における学校教育の課題に教育学がどうアプローチするかで激論を交わした。

教育課題について意見を交わしたオンライン座談会(Zoomで取材)

座談会は同学会の会員を対象に、6~7月に全4回の開催を予定している。初回となったこの日は「新型コロナウイルス禍の中の学校を考える」をテーマに、同学会の「9月入学・始業制」問題検討特別委員会委員長の乾彰夫・東京都立大学名誉教授と、同委員会委員の末冨芳・日本大学教授、同委員会の提言に学会として賛同を表明した日本カリキュラム学会の代表理事を務める松下佳代・京都大学教授が登壇した。

乾教授は、多大なコストやデメリットの大きい9月入学の導入よりも、緩やかに学習の遅れを取り戻すための施策や、教員、学習指導員の補充によって、複数の大人が子供たちに目を向けられるようにすることが優先課題だと強調。

「今年度の第2次補正予算で学習指導員は一定の予算が付いたが、教員は3100人程度。学校再開に当たって、少人数学級にすべきではないかという声も強まっている。課題の一つになるのではないか」と述べた。

子供の貧困問題などに取り組む末冨教授は、9月入学の議論や提言の中で示された問題は、コロナ危機よりも前から日本の教育課題だったと指摘。9月入学のアイデアに一定数の保護者や子供が賛同したのは、「学校現場で子供が大事にされていないことを、保護者や子供はよく分かっていたから、直感的に9月入学でなければいけないと思い込んでしまった。そのことの意味を教育学者は読み取らないといけない」と批判した。

その上で、「少人数学級がイシュー化しているが、パンデミックだからというイシューメークでは、来年には効力を失う。教員の加配を前提に置いてしまうと、それ以外の専門職の配置など、さまざまな問題を見失う。地に足が着いた議論をすべきだ」と提案した。

松下教授はコロナ危機によって、労働の価値が「どうでもいい仕事」と「不可欠なワーク」の二分法に大きく転換すると指摘。AIで代替できない非定型的な労働に必要な力を教育で身に付けていくという、従来のロジックも見直しを迫られるとの見方を示した。

さらにオンライン授業の提供によって、学びのエコシステムが変化したと強調。「休校でどのような環境が提供されたかは、校種や地域によって違った。オンライン授業でも、オンデマンド型と同時双方向型では違う。オンライン授業がどういうものか、つぶさに見ていかないといけない。不登校や障害のある子供、授業では発言できていなかった子供はオンライン授業で恩恵を受けた一方、自宅で静かに学べる環境になかったり、ネット環境がなかったりした子供にとっては、学習格差の拡大になった」と指摘した。

次回の座談会は7月10日に、オンライン授業や学校のICT活用をテーマに開かれる。

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