子どもにとって身近な市町村レベルで、子どもの権利条約を体現した施策を行う「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」について、日本ユニセフ協会は6月22日、5市町における検証作業を踏まえ、正式に日本型のCFCIを全国に展開していくと発表した。発表に合わせて開かれたオンラインイベントでは、検証作業を行った東京都町田市の石阪丈一市長らが、市町村でCFCIを実施していく際のポイントについてディスカッションを行った。
1996年に始まったCFCIは、現在58カ国・地域の5600以上の自治体で取り組まれており、子どもが意見を述べたり、主体的に参画したりする活動を重視したまちづくりが行われている。日本では2016年から北海道のニセコ町と安平町、宮城県富谷市、東京都町田市、奈良市で日本型モデルの検証作業が始まり、一定の成果が示された。これを踏まえて日本ユニセフ協会は、国内の他の市町村にも日本型CFCIを広めていく方針を決めた。
この日のオンラインイベントでは、同協会子どもにやさしいまちづくり事業委員会委員長を務めた木下勇大妻女子大学教授、同協会の高須幸雄副会長、石阪市長の三氏が登壇し、日本型CFCIの可能性について意見を交わした。
高須副会長は、CFCIと国連の持続可能な開発目標(SDGs)との関連性を強調した上で、「市町村で縦割りを横断した一体的な取り組みをしないと、子どもにやさしいまちはできない。条例やまちづくりの総合計画で、SDGsを重視して子どもにやさしいまちが一番上のビジョンとして掲げられ、行政や民間が連携して実践していくことが大切だ」と話した。
児童館の運営に子どもが参加する取り組みをしたり、行政全体でCFCIへの取り組みを推進すべく、評価の仕組みを整えたりした町田市の石阪市長は「大事なことは孤立しないようにすることだ。子どもたちが所属感を持ち、主体的に活動できるように、児童館の職員は接している。NPOや市の職員の役割も同じだ。また、子どものニーズに応えるようなまちづくりを、民間企業と一緒にやっていく」と強調した。
木下教授は「これから日本型CFCIに参加する市町村を募集して、サポートしていくことになるが、全国各地ですでに子どもが参画したまちづくりをしている自治体は数多くある。どんどんエントリーしてもらって、この経験をアジアや世界と分かち合えれば」と今後の展開に期待を寄せた。