【デルタ株危機】安心安全な2学期へ 最前線に立つ校長

 明日から9月となり、ほとんどの学校が2学期を迎える。新型コロナウイルスの感染が収束せず、夏休みを延長したり、午前授業や分散登校を実施したりする自治体もある中で、最前線に立つ学校現場はどう対応するのか。各地の校長に、感染防止対策やオンライン授業への対応など、安心安全な2学期に向けた現状を聞いた。

ICTを使いながら、教員自身でいい方法を見つけ出す

 埼玉県戸田市では、8月25日から2学期がスタートしたが、市内の感染状況を踏まえ、8月中は午前授業とし、給食を食べた後に児童生徒は下校する方針としている。市立美女木小学校の山田一文校長は「家族で濃厚接触者が出たり、少しでも体調が悪かったりしたときは、子どもも教職員も登校・出勤しないことを徹底して、感染リスクを下げる。多くの人が触れる手すりなどの消毒も重点的に行う」と気を引き締める。

 同校ではすでに夏休みに1人1台端末の持ち帰りを行っており、オンライン上での宿題の提出や担任と児童のやりとりも活発に行われている。今年度は三者面談も希望する家庭ではオンラインで実施したり、校内の各教室をつないで始業式を行ったりするなど、普段からICTを利活用する機会を増やしている。山田校長は「オンラインをやっていくうちに、教員も上手になってきた。教員が、他の教員からヒントをもらったり、自分自身でやりながらいい方法を考えたりしていくことが大切だ」と話す。

給食を食べる学年を設定し、万全の対策を
タブレット端末を受け取るために登校した児童ら(新方小学校提供)

 同じく埼玉県内の越谷市では、8月24日に臨時の校長会が開かれ、8月26~31日の臨時休校が決定。それを受け、同市立新方小学校では、8月26日の午前中にタブレット端末を配布するために1時間だけ児童が登校した。

 田畑栄一校長は児童に対し、「デルタ株が猛威を振るい、越谷市でも感染が急拡大していて、子どもから子どもへ、子どもから大人へ感染するケースも増えています。夏休みの延長ではなく、臨時休校となったのは、ステイホームをして命を守ることが目的だよ」と説明。その上で、この臨時休校期間をプラスに捉えて、家庭での手伝いや、タブレット端末も活用しながら、とっておきの時間を過ごすよう呼び掛けたという。

 また、同市は9月1日を始業式とし、9月2~13日は分散登校としている。同校では午前中だけの3時間授業を予定しており、空き教室も活用しながら、各クラスを隣り合う2つの教室に分けて、同時に授業を行う計画を立てた。

 これは、昨年の一斉休校明けにも実施しており、「分散登校よりも短縮授業にした方が、子どもたちは毎日のリズムが整いやすい。教員は2教室を同時に授業する大変さはあるが、同じことを午前と午後でやらずに済むので、負担も少ない」と田畑校長は説明する。

 さらに、給食は9月6日からスタートするが、6~8日は1・4・6年生が、9~10日、13日は2・3・5年生と特別支援学級が食べるように設定し、最大限の感染予防対策をした上で、教育活動を行っていく予定だ。

2学期以降の学校行事は柔軟に変更していく

 東京都品川区では当初の予定通り、9月1日から通常授業が始まる。義務教育学校の同区立豊葉の杜学園でも、2学期に向けて保護者へも再度感染対策の強化を依頼するなどの対応を進めた。

 2学期以降の学校行事について、同校では緊急事態宣言などの発令状況によって柔軟に変更していく方針だ。例えば、昨年も9月に安全対策を十分に行った上で中学3年生の修学旅行を実施した。その教育効果は教員も保護者も強く実感しており、今年の修学旅行も9月から11月に延期した上で実施する予定だ。

 二宮淳統括校長は「修学旅行に限らず、学校行事に関しては、場所や規模は変わるかもしれないが、できるときにできることをやっていきたい」と強調する。

 また、児童生徒が1009人、教職員も100人を超えるため、感染者が出るなどして臨時休校になることも想定。二宮統括校長は「普段から学習指導についてもチームで対処する仕組みを作ってきた。教員が長期間欠席する場合も想定し、チームで動く体制を強化していく」と述べた。

 今年の4月には、Withコロナ時代に向けて校務分掌を見直し。新設された「教育システム開発部」というさまざまな新しいアイデアを作り出す部署が中心となって、タブレット端末の活用や地域との連携強化による教育の推進など、対応策を検討していく体制も整えた。

ピンチをチャンスに変える同時双方向への挑戦

 昨年の一斉休校で、県立高校ではいち早く授業の動画配信をスタートさせ、注目された神奈川県立川崎北高校。県教委では、県立高校の2学期について、時差登校や短縮授業を実施しつつ、感染状況によってはオンライン授業への対応も視野に入れている。

 同校の柴田功校長は「本校ではまだ同時双方向は本格的にやれていないので、この機会に各教室にクロームブックを置いて、教員と生徒をつないだ授業をしたい」と、ピンチでもチャレンジ精神を忘れない。

 一方で、オンライン授業の課題も残っている。生徒のパソコン所持率は決して高いとは言えず、半分程度の生徒は自分のスマートフォンを利用することが多いため、長期間にわたりオンライン授業を行うことになれば、Wi-Fi環境が不十分な家庭などで負担が増える。

 柴田校長は「GIGAスクール構想で小中学校は1人1台環境になっているが、高校はまだ過渡期にあり、環境が十分ではない。電気やガス、水道と同じように、これからはICTもインフラとして、全ての家庭が整備できるような施策をしてほしい」と指摘する。

早めの判断で保護者の不安を取り除く

 基礎疾患のある児童生徒も多く在籍する特別支援学校の東京都立光明学園は、早めの判断と保護者との情報共有を重要視する。

 今年度は当初から1学期は遠足などを行わず、宿泊を伴う行事も日帰りに変更していたが、9月に入ってやっと行うことができるはずだった学年ごとの校外学習も中止を決めると、速やかに保護者への緊急連絡で知らせた。

 田村康二朗校長は「メディアの報道などを見て、保護者の不安は高まっている。まずは学校を落ち着かせる必要がある。そのためにはできるだけ早く判断し、保護者にも安心してもらうことが大切だ」と強調する。教職員が安心して児童生徒に接することができるように、夏休み中のワクチン接種も促し、現在では9割以上の教職員が2回目の接種を完了させたという。

 ただ、緊急事態宣言が長期化するようなことになれば、さらなる教育課程の変更も検討せざるを得なくなる。

 「昨年は休校で授業がつぶれたものの、学校行事ができなかったので、再開後に基礎学習の部分はかなりカバーできた。一方で失ったのは多様な人間関係や社会に出ての学びだ。VRを活用したり、感染対策を徹底した上でゲストを学校に呼んだりして、体験の機会を確保することも考えないといけない」と、田村校長は長期戦を見据えて思考を巡らす。

(【デルタ株危機】特報班)

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