「正しい日本語が自分を守る」 上田まりえ元アナが教員の卵に講義

「正しい日本語が自分を守る」 上田まりえ元アナが教員の卵に講義
学生たちに向けて講義する上田さん
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 「アナウンサーと同じで、先生も人から見られる職業だ」――。元日本テレビアナウンサーで、タレントとして活躍する上田まりえさんを講師に迎え、東京理科大学の井藤元教授は8月2日、教員を目指す学生を対象にしたユニークな授業を実施した。同学の授業科目「学校教育特別実習(一)」を受講する大学院生11人が参加し、相手に思いを伝えるための「日本語力」や正しい言葉遣いについてレクチャーを受けた。日本語検定委員会審議委員も務める上田さんは、教員が正しい言葉遣いや日本語を心掛ける意義について授業の中で繰り返し強調。児童生徒への影響を指摘したほか、「正しい言葉遣いや日本語は信用や信頼にもつながる。だからこそ自分を守るすべとして、言葉遣いを意識してほしい」などと、保護者や地域など周囲と関わる機会の多い教員にアドバイスを送った。

教員は人から見られる職業

 授業では、上田さんがアナウンサーの視点から、相手に思いや情報を伝えるためのスキルを解説した。ポイントの一つに「日本語力」を挙げ、「正しい日本語は、豊かな表現や信用と信頼につながる」と説明して、その上で間違いやすい言葉や言い回しについてレクチャーした。

 例えば、「お召し上がりください」「させていただく」など、二重敬語や丁寧過ぎる敬語。上田さんが実際に体験したエピソードを交えながら説明すると、学生たちは「よく聞く」「私も使っていた」と大きくうなずいていた。過剰な敬語は相手を不快にさせてしまう可能性を指摘し、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の違いを正確に理解した上で使い分けるよう呼び掛けた。

 他には「“ら”抜き言葉」や「“さ”入れ言葉」についても警鐘を鳴らした。最近ではテレビ番組やYouTube動画などでも耳にする機会もあるが、上田さんは「特に教員のように、公に何かを伝える職業に就いている方には間違えないでほしい」と強調。その上で、誤用しないためのポイントをアドバイスした。

 言葉遣いを巡り上田さんは「身だしなみと一緒で、魅せたい自分を表現する一つのツールだと思っている。服装やメイクで自分を表現できるように、言葉遣いでも表現できる。ぜひ、おしゃれの一つだと思って楽しんでほしい」と自身の考えを説明した。その上で、友達や教員など慣れ親しんだ人を中心にコミュニケーションを取る機会が多い学生に向けて、「いろいろな人の言葉に触れて、アップデートしてほしい。日頃から、簡単で楽な言葉に頼らないよう心掛けて」と助言した。

 また、学校現場で交わされる言葉の重要性についても繰り返し強調。上田さんは「子どもにとって家庭教育や学校教育は人生のベースになるので、先生たちにはよりすてきな日本語、よりすてきな言葉で児童生徒に思いや学びを届けてほしい」とメッセージを送った。さらに、「アナウンサーと同じで先生も人から見られる職業なので、とても大変だと思う。正しい言葉遣いや日本語は信用や信頼にもつながる。だからこそ自分を守るすべとして、言葉遣いを意識してほしい」と、学校現場にエールを送った。

教員としての表現力磨く機会を学生に

 参加した学生の一人は「私自身、高校時代の先生の口ぐせがうつっているので、教師の影響力は強いと常々感じている。教員になったとき、私が無意識に使っている言葉を生徒がまねてしまう可能性もあるので、言葉遣いには気を付けていきたい」と決意を語った。

 また、教員を休職して学んでいる学生は「普段生徒を相手にするので、ついなれ合いになってしまい、言葉遣いにまで意識がいっていない部分があった。保護者と話すときや講演会のときなど、自分の言葉遣いのまずさを自覚する機会があったと改めて思い出した」と振り返った。

 「学校教育特別実習(一)」は2単位・全15コマの授業で、8月1日・2日・4日の3日間に渡り、集中講義型で実施。上田さんの他にも、漫才師やミュージカル俳優など表現のプロを講師として迎え、さまざまな表現技法を多角的に学ぶことに主眼を置く。

上田さん(右)と井藤教授
上田さん(右)と井藤教授

 同授業を担当する井藤教授は「漫才師やミュージカル俳優、アナウンサーなど、表現の手法はそれぞれ違う。ただ表現のプロとして、共通の基盤があると思う。学生たちには自分に合う手法、入り口を見つけてもらって、学校現場で生かせる表現力を磨いてほしい」と狙いを明かす。

 また「教職課程の学生は履修科目も多く、余裕がない。教員としての表現力を磨くことは、教職課程では軽視されがちであり、個人のポテンシャルに任されているのが現状。表現に特化した科目を教職課程に組み込む動きを、全国的に広めていきたい」と展望を語った。

【訂正】記事中に「井藤元准教授」とあったのは、正しくは「井藤元教授」でした。

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