本連載を通して、非正規教員問題は非正規教員だけの問題では決してなく、教員全体の労働条件の低下を惹起し、子どもたちの学習権に大きな影響を及ぼすことから、公教育全体の問題として引き受けなければならないことを示してきた。そこで最終回では、そもそも教職・教師とは何かについて考えていきたい。
非正規教員を巡る問題は山積している。現在、この問題を解消しようと国をはじめ、多くの団体や研究者などがそれぞれの立場から提言や主張を述べたり、それを実行したりしている。今回はそれらの動向を整理したい。
非正規教員を取り巻く労働環境は、いわゆる「空白の一日」問題の解消や給料の2級格付けなど、少しずつ(しかし、確かな一歩として)改善されつつある。とはいえ、当事者の立場に立てば、その一歩ずつの歩みがとても遅く感じているだろうし、正規教員との身分・待遇の格差にやるせなさを感じているだろう。今回は非正規教員が日々何に悩み・苦しんでいるのか、その一端に触れながら、私たちが何に向き合うべきなのかを考えていきたい。
昨今の教員不足は極めて深刻である。今年度も学級担任や特定の教科(科目)担当教員が不在のままスタートした学校が幾つもあったようだ。NPO法人School Voice Projectなどの「#教員不足をなくそう!緊急アクション」による最新の調査結果が公表されたことは記憶に新しい。それにもかかわらず、世間一般にはその深刻さが十分に伝わっていないように感じられる。
非正規教員と聞けば、教員採用試験に落ちたが正規教員になりたい新卒や若手の人たちばかりだとイメージする人が多いかもしれない。しかし、実際に非正規教員として働いている人たちのバックグラウンドは多様である。
非正規教員は2000年代以降の幾つかの制度改正によって急増したと言われている。しかし、実は2000年よりも以前から、非正規教員に依存するかのような任用傾向=いわば「前兆」があった。今回はその「前兆」の一端に触れることで、非正規教員問題を歴史的に捉えてみたい。紙幅も限られているため、1960年代を中心に見ていく。
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