第8回 非正規教員が抱える苦悩をどう受け止めるか

第8回 非正規教員が抱える苦悩をどう受け止めるか
【協賛企画】
広 告

 非正規教員を取り巻く労働環境は、いわゆる「空白の一日」問題の解消や給料の2級格付けなど、少しずつ(しかし、確かな一歩として)改善されつつある。とはいえ、当事者の立場に立てば、その一歩ずつの歩みがとても遅く感じているだろうし、正規教員との身分・待遇の格差にやるせなさを感じているだろう。今回は非正規教員が日々何に悩み・苦しんでいるのか、その一端に触れながら、私たちが何に向き合うべきなのかを考えていきたい。

 多くの非正規教員から語られる苦悩は、「環境の変化」である。正規教員の場合、特定の学校に着任すれば数年間はほぼ確実に異動がないが、非正規教員の場合はかなり短いスパンで複数の学校を渡り歩く。その期間は1年だったり2年だったり、もしかすると3カ月間だったりする。その都度、非正規教員はその学校の教職員・子どもたち・保護者・地域住民などとゼロから関係をつくらなければならない。

 他の教職員同様に4月1日から着任できればまだよいが、学期の途中から着任することも多い。クラスの人間関係ができた(あるいは心理的安全性が高まった)時に、途中から新たなクラス(教科)担任として子どもたちとの関係をつくり上げなければならないことの難しさは相当なものであろう。長く非正規教員として勤務している者は、これを何度も繰り返している。

 近年では教員不足に対応するため、臨時免許状の授与を前提に専門外教科(科目)担当として声が掛かるケースもある。専門外教科の勉強時間確保はもとより、「専門外を教えるのは子どもたちに失礼ではないのか」との思いと「それでも働かなければ生きていけない」との思いの間で尻込みし、大きな心理的ストレスとしてのしかかる。また、多くの学校から声を掛けてもらえるよう、勤務時間の合間を縫って他校種の免許状や教育・福祉関係の資格取得のための勉強に取り組む者も多い。

 こうした苦悩を抱えている非正規教員の多くは、教員採用試験の合格を目指している。それにもかかわらず、多くの自治体では非正規教員としての経験・実績を十分に評価していない。法的な根拠(地公法第22条の3第5項)もあろうが、あまりに理不尽だと感じてしまう。多くの非正規教員のおかげで今の学校教育がどうにか維持されていることを踏まえれば、やはり教育基本法第9条やILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」第45項が要請している教員の身分や待遇の在り方から強く問題提起をしなければならない。

 時折、「非正規教員の仕事が大変ならば、早く採用試験に合格すればよい」などという放言も散見されるが、今回取り上げた「苦悩」は非正規教員の単なる愚痴では決してない。子どもたちの学習権をどう保障していくべきなのかという論点であることを強調しておきたい。問題は当事者ではなく「制度」にある。故に正規教員と非正規教員との間の対立・分断だけは避けなければならない。

広 告
広 告