第7回 教員不足問題における非正規教員の位置

第7回 教員不足問題における非正規教員の位置
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 昨今の教員不足は極めて深刻である。今年度も学級担任や特定の教科(科目)担当教員が不在のままスタートした学校が幾つもあったようだ。NPO法人School Voice Projectなどの「#教員不足をなくそう!緊急アクション」による最新の調査結果が公表されたことは記憶に新しい。それにもかかわらず、世間一般にはその深刻さが十分に伝わっていないように感じられる。

 その大きな理由の一つは国による非正規教員の位置付け方にあると思われる。今回は教員不足問題における非正規教員の位置について整理していきたい。

 教員不足に関する調査結果は2022(令和4)年1月に文部科学省から公表された。その「『教師不足』に関する実態調査」(以下、本調査)の実態は、学校現場の感覚から大きく外れたものばかりであった。

 本調査によれば、21(令和3)年5月1日時点における全国の公立学校の教師不足率は小学校が0.26%、中学校が0.28%、高等学校が0.1%、特別支援学校が0.26%という結果であった。これには学校現場・教育関係者から一斉に違和感の声が上がった。

 その違和感を生み出した大きな要因は「教師不足」の定義にある。本調査は「臨時的任用教員等の講師の確保ができず、(中略)欠員が生じる状態」を「教師不足」として定義しているのである。すなわち、臨時的任用教員等=非正規教員を確保さえしていれば、教員不足として認知されないという意味になる。

 本調査を巡ってはすでに幾つかの問題点が指摘されているところではあるが、ここでは非正規教員問題との関係から大きく2点を指摘しておきたい。1点目は、先ほどの「定義」である。自治体の立場からこの定義を捉えれば、「教員不足が深刻な自治体」というレッテルを貼られないように、とにかく非正規教員を採用することでその穴(欠員)を埋めようと考えるだろう。換言すれば、自治体の非正規教員依存をさらに助長させる機能を有していると指摘できる。

 2点目は、非正規教員に依存することを「当たり前」としているかのような調査の枠組みである。例えば、本調査は「教師不足」の要因の一つとして産育休・病休などの増加によって「臨時的任用教員が見込みより増加したこと」や、臨時的任用教員のなり手不足を挙げている。臨時的任用教員の採用はあくまで、子どもの学習権保障のための臨時的・緊急的な手段にすぎないことは本連載でも確認してきた。本来であれば、国は各自治体が安心して多くの正規採用を実施できるよう環境整備に取り組むべきであり、一刻も早く具体的な財政保障を展開すべきだろう。

 少子化を踏まえた教員需給を見定めることは確かに重要な課題だろうが、だからといって今目の前にいる子どもたちの学習権が侵害されることはあってはならない。私たちは財政保障を国に訴えるとともに、教員人事制度の功罪に正面から向き合わなければならない。

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