非正規教員を巡る問題は山積している。現在、この問題を解消しようと国をはじめ、多くの団体や研究者などがそれぞれの立場から提言や主張を述べたり、それを実行したりしている。今回はそれらの動向を整理したい。
日本教職員組合(日教組)や全日本教職員組合(全教)は、これまでも継続的な取り組みを展開してきている。直近の動向を確認すると、日教組は「政策制度要求と提言(2023~2024年度版)」をホームページ上で公開している。その「教職員が安心とゆとりを持って働き続けられる労働条件の改善」という項目の中で、「臨時・非常勤教職員等」について言及している。基本的には処遇改善と雇用安定を主張しており、給料の2級適用を進めることや正規職員と同等の諸権利の確保などについて述べている。他方、全教では臨時教職員対策部が2023年12月18日に文部科学省に対し、「臨時教職員の多用化をやめ、臨時教職員問題の抜本的な解決を求める要求書」を提出している。日教組同様に給料の2級適用をはじめ、研修機会の保障、そして依然として存在している任用の「空白期間」の解消など、臨時・非常勤教職員の賃金・労働条件の抜本的な改善を求めている。これに加えて、非正規教員増加の制度的要因である「定数崩し」や「総額裁量制」の廃止も求めている。無論、その根底には「正規教職員の配置を基本」とし、非正規教職員はやむを得ない場合など、限定的な任用にとどめるべきとする考えがある。
一方で、国の動向はどうだろうか。22年1月の「『教師不足』に関する実態調査」で非正規教員に関する実態を把握しようとしていたり、「今後の教職員定数の在り方等に関する国と地方の協議の場」(第1回:21年5月17日)を開催し、非正規教員割合の基準を巡って議論を交わしたりしている。国レベルにおいても非正規教員問題に対する関心は高まっていると言える。ただし、今後の議論の行方を注視する必要はあるが、現時点では少なくとも非正規教員の任用をなくすという方向性ではないことが看取される。
さて、実は1980年代に神田修・土屋基規が刊行した『教師の採用』(1984年、有斐閣選書)の中で、臨時教師問題とその解決方針に触れている。そこには、「臨時的任用の教師は、(中略)原則的にはこれをなくす方向で問題の解決をはかるべき」と端的に指摘している(p.226)。その大きな理由の一つは、子どもたちの学習権保障である。学校教育は組織的・系統的であるから、継続的に教育活動を行うためには教師の身分・待遇は適正に保障されなければいけない(同上)。まさに「教師の労働条件は子どもの教育条件」なのである。「代替定員化」や「プール制」など、これまでの教育労働運動から生まれたアイデアなどを参照し、「正規化」していく方向性で議論が進むことを期待したい。