アウトリーチ支援へのデータ連携「非常に重要」 永岡文科相

アウトリーチ支援へのデータ連携「非常に重要」 永岡文科相
質疑に応じる永岡文科相
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 来年4月に発足するこども家庭庁と文科省の連携による学校のいじめ防止・不登校対策について、永岡桂子文科相は12月6日の閣議後会見で、「潜在的に支援が必要な子供をアウトリーチ支援につなげるためのデータ連携の推進は、非常に重要。こども家庭庁と緊密に連携しながら、困難を抱える児童生徒に対する切れ目のない包括的な支援を進めていく」と述べた。アウトリーチ支援は、生活保護の受給状況など自治体が持つさまざまな家庭に関するデータを学校の教育活動などに結び付け、表面的には見えにくい児童生徒の困難な状況を把握して積極的な支援に生かしていくアプローチで、こども家庭庁が実現を目指している。永岡文科相は、こうしたこども家庭庁の取り組みについて、学校教育を所管する文科省として「一体化して進めていく」との考えを表明した。

 永岡文科相は、学校に関わる文科省とこども家庭庁との連携について質疑に応じ、「児童生徒の抱えている問題や課題は大変複雑化しているし、また多様化している。学校だけでは対応が困難である場合が、大変多くある。外部の専門機関などと積極的に連携・協働して、『チーム学校』として子供たちの健全な成長発達を支えることが大変重要と考えている」と述べ、児童生徒が抱えるさまざまな支援ニーズに応えるためには、学校の教職員だけではなく、外部との連携を含めた「チーム学校」による対応が必要となっていることを改めて強調した。

 次に、こども家庭庁の設立に伴ういじめ防止・不登校対策の推進内容について、▽地域におけるいじめ防止対策の充実▽居場所作りの推進▽要保護児童対策地域協議会(要対協)などの枠組みを活用した支援--を挙げた。これらの内容はいずれも学校外からのアプローチで、昨年12月21日、こども家庭庁の設置に先駆けて閣議決定された「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」に、いじめ重大事案の調査を巡る連携などとともに盛り込まれている。

 その上で、永岡文科相は学校現場の内部に関わるアプローチとして、「潜在的に支援が必要な子供をアウトリーチ支援につなげるためのデータ連携への推進は、非常に重要だと思っている。これにこども家庭庁が取り組むと承知しており、こうした(いじめ防止や不登校などの)課題の対策に、大きく資するものと考えている」と指摘。「文科省としては、こども家庭庁と緊密に連携しながら、困難を抱える児童生徒に対する切れ目のない包括的な支援を進めていく」と続けた。

 これまで文科省とこども家庭庁は、閣議決定された基本方針の中で、いじめ防止・不登校対策に連携して取り組むとされつつも、予算要求などの政策づくりでは、学校現場に関わる内容は文科省が扱い、こども家庭庁は児童ホームを活用した居場所づくりなど学校外からのアプローチを担うことで、一種の住み分けを図ってきた。それに対して、アウトリーチ支援につなげるためのデータ連携は、こども家庭庁が取り組むアプローチが学校現場に直接関わる内容となっている。

 こうした学校現場に関わる政策で文科省がこども家庭庁との連携を進めることについて、永岡文科相は「いじめ防止対策ではすでに一緒にやっている。それと同じように、(データ連携など)こども家庭庁がこれからやりたいことについても、文科省の中で連携して情報共有をしながら、一体化して進めていくことができると思っている」と述べ、積極的に取り組む考えを明らかにした。

 アウトリーチ支援につなげるためのデータ連携では、文科省やデジタル庁など4副大臣によるプロジェクトチームが今年6月、論点整理を取りまとめ、データ連携の目的を「貧困・虐待などの困難な状況にある、潜在的に支援が必要な子供・家庭を早期発見し、ニーズに応じたプッシュ型(アウトリーチ)の支援につなげる」と整理。今年度の実証事業を通じて、早期発見に役立つ教育・保育・福祉・医療などのデータ項目やデータ管理の体制などを検証していく方針を示している。

 また、一部の自治体では、国の取り組みに先駆けて、データ活用による学校教育と福祉の融合を進めている。先進的な取り組みで知られる大阪府箕面市の藤迫稔教育長は、今年3月、文科省の調査研究協力者会議で報告を行い、生活保護の受給状況など家庭に関する情報なども集約したデータを学校の教育活動に反映することにより、「貧困の連鎖など、学校でノーマークの子供への『支援漏れ』を見つけられるようになった」などと成果を説明している。

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