第5回 非認知能力はどうやって伸ばしたらいいの?③

第5回 非認知能力はどうやって伸ばしたらいいの?③
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 「言行一致」という言葉があります。私の好きな言葉の一つです(反対に嫌いな言葉は「口だけ番長」です)。前回登場した価値観は、言葉で発することもできます。しかし、せっかく言葉で良いことを言っていても、行動が伴っていなければ周囲から信頼されないことは、誰もがご存じのことでしょう。

 価値観が私たちの意識のベースとなって、それを体現しようと意識を働かして行動に移していくことで、何らかの非認知能力の変容、ひいては人格の形成が期待できます。そのため、意識のベースとなる価値観の次には、「明確に意識すること」、そして「行動として体現すること」というレベルが続くわけです。

 では、「明確に意識する」ために必要なことは何でしょうか。それは、自分自身のモニタリングとコントロールです。これは「自己認識」や「メタ認知」と呼ばれています。私たちは自らの価値観によるイメージと現状を照らし合わせて、万一ズレているようならできるだけ早くそのズレを修正していきたいものです。

 また、仮にズレていなかったとしても、価値観によるイメージを体現できるために必要な行動は何かを明確にできれば、次のレベルへ移行しやすくなるでしょう。そのため、私たちは子どもたちにそのズレについて教えたり、さらには発達段階にもよりますが自ら自己認識できるように振り返りを促したりしているのです。

 さて、ここまでくればあとは「行動として体現する」のみです。例えば、短気ですぐにキレやすい男の子が、「寛容さ」や「器の大きさ」に価値を感じたとしましょう(価値観)。そこで、彼は自分がキレやすいことを受け入れ、ちょっとのことではキレない「我慢強さ」を意識し始めたとします(自己認識)。ある日から、彼は1日また1日とキレないようにぐっとこらえ始めました。するとどうでしょう。あれだけ頑張って意識していたのに、次第に当たり前に我慢できるようになってきたのです。

 しばらくすれば、そんな彼のことを周囲の子どもや教師は「最近、アイツ丸くなったなぁ…」と評価するようになっていきます。これこそが、まさに彼の中の「自分と向き合う力」の変容を表しているのではないでしょうか。

 この次第に習慣化してきた行動のことを行動特性(コンピテンシー)と言います。この行動特性は、彼のように自ら意識を持つことが大切ですが、私たちができることは良い行動を習慣化しやすくなるように褒めるなどのフィードバックではないでしょうか。

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