【神谷正孝の5分でわかる教育時事2024(1)】教育時事の対策2024 教育時事対策の基本方針

【神谷正孝の5分でわかる教育時事2024(1)】教育時事の対策2024 教育時事対策の基本方針
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 皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。今回から、来年度の試験に向けた教育時事対策に入りたいと思います。

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採用試験の動向と対策の基本方針

 採用試験の前倒しの発表や大学3年時での受験が可能になるなど教員採用試験を取り巻く状況は変化しています。

 ここまで発表されたことによると、試験自体をこれまでより1 ̄2カ月程度前倒しで実施する自治体が多いようです。また、いくつかの自治体では大学3年生の受験も認めるとしており、その場合、1次試験に合格した際は翌年に2次試験を受ける形となるようです。

 2024(令和6)年度の採用試験に向けた教育時事の対策としては、別掲の3つの重要テーマを押さえるとともに、1次試験(筆記・論文)の場合は、受験する時期の3カ月前くらいまでのトピックを、2次試験(面接・論文)ではローカル時事も含めた試験直前までのトピックを整理しておきましょう。試験の前倒しに応じて対策の早期化が求められます。

 しかし、今すぐ教育時事の対策をしようとして、重要な答申資料などを読んでも全体像が理解できないと思います。教育政策を理解するためには、最低限、学習指導要領や教育課程についての知識、特別支援教育の知識、教育法規の基本知識などが下地として備わっている必要があります。つまり、筆記試験に向けた教職教養の対策がある程度進んでからでないと、キーワード同士がつながらず、十分な理解に結び付かないのです。

 教職教養の学習の際にそのことを意識しながら対策を進めることが大切です。学習指導要領や特別支援教育などについては、単に言葉を覚えるだけでなく、理念や改訂の背景、今後の方向性についても押さえるようにしましょう。

教育振興基本計画について

 どのようなことが話題になり得るのかをつかむ上では、教育振興基本計画を確認することをお勧めします。ある程度教職教養対策が進んできた段階で、教育振興基本計画を見てみましょう。最新版である第4期計画は23年6月に閣議決定されています。この第4期計画は大きく4つの内容から構成されていますが、「1.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望」の部分は、教育時事の対策の方針をつかむ上でも重要です。「(2)第3期計画期間中の成果と課題」から「(3)社会の現状や変化への対応と今後の展望」にかけての内容を一読すると、現在の学校や社会が抱える教育課題、教育時事のトレンドが見えてきます。

 続いて、「2.今後の教育政策に関する基本的な方針」以下を確認していくことになりますが、基本コンセプトや基本方針として掲げられた5つの内容については、そのまま空欄補充形式での出題も見受けられるので、しっかりと読み込んでおきましょう。なお、同計画の「3.」「4.」では、教育行政や細目的事項について述べられていますが、採用試験ではあまり出題されません。また、採用試験での出題は初等中等教育に関連する内容が多く、大学以降の教育や社会教育に関しては出題されないので、メリハリを付けて対策するようにしましょう。

教育時事の学習対策

 毎年述べていることですが、採用試験における教育時事は、知識として知っていることはもちろん、それだけでなく「内容を理解した上で、自分の言葉で自分の関わり方を話す」ことが求められます。そのためには、教育ニュースなどについて情報収集を行うとともに、教育現場での実践の視点から、自分の取り組み方や問題意識について整理しておくとよいでしょう。それが、論文や討論での意見陳述の下地となります。

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 図表では来年狙われそうな時事テーマとトピックについてまとめました。今後、この連載で重要事項を整理していくことにします。

1.次は,中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」(令和3年1月26日)の一部である。文中の(A)~(D)にあてはまる語句の正しい組合せを選びなさい。

 急激に変化する時代の中で,我が国の学校教育には,一人一人の児童生徒が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる( A )を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,( B )の創り手となることができるよう,その資質・能力を育成することが求められている。

 「予測困難な時代」であり,新型コロナウイルス感染症により一層先行き不透明となる中,私たち一人一人,そして社会全体が,答えのない問いにどう立ち向かうのかが問われている。目の前の事象から解決すべき課題を見いたし,( C )に考え,多様な立場の者が協働的に議論し,( D )を生み出すことなど,正に新学習指導要領で育成を目指す資質・能力が一層強く求められていると言えよう。

   A     B       C    D

1 他者  持続可能な社会  多面的  納得解

2 他者  新しい社会    主体的  絶対解

3 他者  持続可能な社会  主体的  納得解

4 生命  新しい社会    多面的  絶対解

5 生命  持続可能な社会  多面的  絶対解

6 生命  新しい社会    主体的  納得解

解答3 

2.次の文章は「教育振興基本計画」の一部である。空欄に当てはまる語句の組み合わせを選びなさい。

Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針

(2)日本社会に根差したウェルビーイングの向上

○ウェルビーイングとは身体的・精神的・社会的に良い状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、( 1 )や人生の意義など将来にわたる持続的な幸福を含むものである。また、個人のみならず、個人を取り巻く場や地域、社会が持続的に良い状態であることを含む包括的な概念である。

○ウェルビーイングの捉え方は国や地域の文化的・社会的背景により異なり得るものであり、一人一人の置かれた状況によっても多様なウェルビーイングの求め方があり得る。

○すなわち、ウェルビーイングの実現とは、多様な個人それぞれが幸せや( 1 )を感じるとともに、地域や社会が幸せや豊かさを感じられるものとなることであり、教育を通じて日本社会に根差したウェルビーイングの向上を図っていくことが求められる。

○ウェルビーイングの国際的な比較調査においては、自尊感情や( 2 )が高いことが人生の幸福をもたらすとの考え方が強調されており、これは個人が獲得・達成する能力や状態に基づくウェルビーイング(獲得的要素)を重視する欧米的な文化的価値観に基づく側面がある。同調査によると日本を含むアジアの文化圏の子供や成人のウェルビーイングは低いとの傾向が報告されることがあるが、我が国においては利他性、( 3 )性、社会貢献意識など、人とのつながり・関係性に基づく要素(( 4 )的要素)が人々のウェルビーイングにとって重要な意味を有している。このため、我が国においては、ウェルビーイングの獲得的要素と( 4 )的要素を調和的・一体的に育む日本発のウェルビーイングの実現を目指すことが求められる。こうした「調和と( 4 )(Balance and Harmony)」に基づくウェルビーイングの考え方は世界的にも取り入れられつつあり、我が国の特徴や良さを生かすものとして国際的に発信していくことも重要である。

○日本社会に根差したウェルビーイングの要素としては、「幸福感(現在と将来、自分と周りの他者)」、「学校や地域でのつながり」、「( 3 )性」、「利他性」、「多様性への理解」、「サポートを受けられる環境」、「社会貢献意識」、「自己肯定感」、「自己実現(達成感、キャリア意識など)」、「心身の健康」、「安全・安心な環境」などが挙げられる。これらを、教育を通じて向上させていくことが重要であり、その結果として特に子供たちの主観的な認識が変化したかについてエビデンスを収集していくことが求められる。なお、( 4 )的幸福については、「同調圧力」につながるような組織への帰属を前提とした閉じた( 4 )ではなく、他者とのつながりやかかわりの中で( 5 )する基盤としての( 4 )という考え方が重要であるとともに、物事を前向きに捉えていく姿勢も重要である。

ア 1:生きがい  2:自己効力感  3:協働  4:協調  5:包摂

イ 1:生きがい  2:自己有用感  3:協調  4:協働  5:包摂

ウ 1:生きがい  2:自己効力感  3:協働  4:協調  5:共創

エ 1:精神的健康 2:自己有用感  3:協調  4:協働  5:共創

オ 1:精神的健康 2:自己有用感  3:協働  4:協調  5:包摂

カ 1:精神的健康 2:自己効力感  3:協調  4:協働  5:共創

解答 ウ

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