皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。今年度の採用試験も一部を除き終了しました。今回から、来年度の試験に向けた教育時事対策に入りたいと思います。
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教員採用試験における教育時事は、筆記試験では答申や資料を基にした空欄補充問題や正誤問題として出題されることが多く見られます。空欄補充では選択肢が与えられる場合が多いため、基本的な用語を正しく理解するとともに、教育施策の方向性を把握しておくことが重要です。また、教育関連の法令については、最新の改正点や令和以降に成立した新たな法律も必ず確認しておきましょう。
教育時事の学習を始める時期は、一通り教職教養対策を終えたのちに始めるのがよいと思います。学習指導要領や教育課程、特別支援教育、教育法規などの基本的な知識を押さえておくことで、政策や施策に関するキーワード同士が自然につながり、理解が深まるからです。
人物評価試験では、教育時事は討論や論作文のテーマとして扱われるほか、面接で特定の時事的課題について意見や取り組み方を問われることがあります。そのため、筆記対策だけでなく、時事を踏まえて自分の考えをまとめておくことが求められます。
来年度の試験に向けて、特に注目しておきたい教育時事のテーマは4つあります。
1つ目は「学習指導要領の改訂」です。現在、改訂に向けた審議が進められていますが、いきなり改訂内容に目を向けるのではなく、まずは現行学習指導要領の基本方針を理解することが大切です。特に「主体的・対話的で深い学び」や、「令和の日本型学校教育」で示された「個別最適な学び」などの方向性を押さえた上で、柔軟な教育課程編成や評価の観点の改善といった改訂議論の内容に進むと、より体系的に理解できます。
2つ目は「いじめ」「不登校」「自殺」など、生徒指導上の課題です。特に面接試験を意識すると、生徒指導提要の内容を踏まえ、未然防止や初期対応、再発防止策について具体的に説明できることが望まれます。「いじめ」では、当事者への個別支援に加えて、学級全体や学校全体での取り組みも大切です。「不登校」では、校内外の支援体制の充実や、学びの機会確保、将来の自立につながる支援の在り方について理解を深める必要があります。また、「自殺」については、小中高生の自殺者数が過去最多となった現状を踏まえ、予防教育や「SOSの出し方に関する教育」といった施策への理解が重要です。
3つ目は「情報教育・情報モラル教育」です。近年は、生成AIやICTを活用した学習、SNSとの適切な関わり方が大きなテーマになっています。生成AIに関しては、基本的な用語の意味を理解し、文部科学省が示すガイドラインも確認しておきましょう。SNSに関しては、単なるトラブル対応ではなく、情報モラル教育の一環として位置付け、具体的な課題への対処方法を整理しておくと、論文や討論、面接試験でも活かせます。
4つ目は「学力」に関するテーマです。最新の全国学力・学習状況調査では、小中学校での国語、算数・数学の得点率が下がったことが指摘されています。受験する自治体の状況を把握するとともに、調査で示された学習習慣や生活習慣に関する課題も確認しておくと、面接や論文・討論で具体的に言及しやすくなります。
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次回以降、この連載では来年度の試験で出題されやすいテーマやトピックを整理し、重要資料と合わせて解説を進めていきます。教育時事は単なる知識として覚えるだけでなく、自分の考えや実践と結び付けられるようにしましょう。
1.次の文は,文部科学省の「教育の情報化に関する手引-追補版」(2020(令和2)年6月)の一部である。ア~ウに当てはまる語句の組合せとして適切なものは,下の1~5のうちどれか。
今日の社会は,生活のあらゆる場面でICTを活用することが当たり前の世の中となっている。さらに,人工知能(AI),ビッグデータ,IoT(Internet of Things ),ロボティクス等の先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられ,社会の在り方そのものが劇的に変わる「Society5.0」時代の到来が予想されている。
このような時代において次代を切り拓く子供たちには,( ア )をはじめ,言語能力や数学的思考力などこれからの時代を生きていく上で基盤となる資質・能力を確実に育成していく必要があり,そのためにもlCT等を活用して,「( イ )された学び」や学校における働き方改革を実現していくことが不可欠である。(中略)
このような状況も踏まえ,今回改訂された学習指導要領においては,初めて「( ア )」を学習の基盤となる資質・能力と位置付け,( ウ )その育成を図ることとした。
1 ア 主体的に学ぶ力 イ 公正に個別最適化 ウ 課題探究的に
2 ア 主体的に学ぶ力 イ 高度に個別情報化 ウ 教科等横断的に
3 ア 情報活用能力 イ 公正に個別最適化 ウ 課題探求的に
4 ア 情報活用能力 イ 高度に個別情報化 ウ 教科等横断的に
5 ア 情報活用能力 イ 公正に個別最適化 ウ 教科等横断的に
解答 5
2.下の文は,「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について(通知)」 (2023(令和5)年3月31日文部科学省)の一部である。このことについて次の問いに答えよ。
不登校児童生徒への支援につきましては,①義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律等に基づき,関係者において様々な努力がなされ,児童生徒の社会的自立に向けた支援が行われてきておりますが,近年,不登校児童生徒数が増加し続け,令和3年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では,小学校及び中学校で約24.5万人,高等学校を合わせると約30万人に上り過去最高となるなど,生徒指導上の喫緊の課題となっております。また,同調査からは,90日以上の不登校であるにもかかわらず,学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない小・中学生が約4.6万人に上ることも明らかとなっています。こうした状況を受けて,文部科学省では,このたび永岡文部科学大臣の下,別添のとおり,②「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を取りまとめました。
(1)下線部①の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律第3条に挙げられる同法の基本理念に照らして誤りのあるものを1つ選べ。
1 全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り,安心して教育を受けられるよう,学校における環境の確保が図られるようにする。
2 不登校児童生徒が行う学習活動の傾向を踏まえ,全国で統一された基準的な支援が行われるようにする。
3 不登校児童生徒が安心して教育を受けられるよう,学校における環境の整備が図られるようにする。
4 義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ,その年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく,その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにする。
5 義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者がその教育を通じて,社会において自立的に生きる基礎を培い,豊かな人生を送ることかできるよう,その教育水準の維持向上が図られるようにする。
6 国,地方公共団体,教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に行われるようにする。
(2)同通知および下線部②で示される対策(プラン)について,次の( )に当てはまる語旬はどれか。
児童生徒が不登校になった場合でも,小・中・高等学校等を通じて,( )多様な学びにつながることができるよう,不登校児童生徒の個々のニーズに応じた受け皿を整備するとともに,教育支援センターが地域の拠点となって,児童生徒や保護者に必要な支援を行うことが重要である。
1 学びたいと思った際に 2 上級の学校へ進学するために
3 保護者の意向に即して 4 児童生徒が希望する
5 学校の教員が自宅を訪問するなどして 6 体験的な活動を伴う
解答
(1)2 【解説】(1)2:「全国で統一された基準的な支援」が誤り。
(2)1