学校教員の多忙は、もはや社会の共通認識になっていると言っても過言ではないだろう。今年4月に公表された教員勤務実態調査(2022年度)の速報値によると、教諭の平日における平均在校等時間は小学校が10時間45分、中学校が11時間1分で、前回調査(16年度)に比べていずれも30分程度の減少と報告されている。勤務時間の短縮が見られているとはいえ、過労死ラインに相当する週60時間以上の勤務をしている教員の割合は小学校で14.2%、中学校では36.6%に達している。
国際的に見ても、日本の学校教員の勤務時間の長さは際立っている。OECD(経済協力開発機構)が実施している「国際教員指導環境調査」(TALIS)の2018年調査の結果によると、日本の学校教員は調査参加国の中で最も長い勤務時間(小学校が週54.4時間、中学校が週56時間)となっており、参加国の中で唯一、週平均労働時間が50時間を超えていることが報告されている。なお、同調査に参加した48カ国の週平均労働時間は38.3時間である。
TALISの調査結果には、やや衝撃的なものも含まれている。日本の学校教員は「この学校を良い職場だと人に勧めることができる」「現在の学校での自分の仕事の成果に満足している」との質問に対し、肯定的に回答した割合が参加国平均を大きく下回っている。中でも、現在の学校での仕事の成果に対する肯定的な回答の割合は5割に満たない。世界一長く働いているのに、仕事の成果に対する満足度は低い。これが日本の学校教員の平均的な姿なのである。
学校教員に限らず、長時間労働は心身の健康に悪影響を及ぼす。文科省が公表している最新の調査結果によれば、教育職員の精神疾患による病気休職者数は、21年度に5897人(前年度比694人増)となり、過去最多を記録している。過去にさかのぼると、精神疾患による休職者数が急増したのは、01年から08年にかけての時期であったのだが、この間、全国の教育職員数は実に1万人以上も減少していたのである。
教員の多忙・長時間労働を改善する施策としては、例えば業務の効率化や各種外部人材の活用といった方策が挙げられるが、根本的な解決には教員の配置数を増やして教員一人当たりの業務量を減らすことが不可欠であると考えられる。少人数学級政策は学級規模の縮小と同時に、編制される学級数の増加に対応して教員配置数の増加をもたらす。つまり、少人数学級政策は教員の多忙という課題に対し、有効な施策となる可能性があると考えられる。