今回はプロジェクト2「誰一人取り残さないプロジェクト」の概要と、プロジェクト1「学びを変えるプロジェクト」とのつながりを中心にお話します。
プロジェクト2は主に不登校と呼ばれている状態に代表されるような「教室での授業の機会を何らかの理由で得られていない児童生徒」についてのプロジェクトです。内容としては、教育総合支援センターのリニューアルや学校内サポートルームの設置、子どものSOSをキャッチする仕組みづくり、保護者相談体制の充実、科学的な観点を取り入れた発達支援の在り方の実証などがあります。プロジェクト2の具体的な内容については次回の記事で詳しくご紹介します。
今回、加賀市学校教育ビジョンを策定するにあたって、教育長には「不登校の児童生徒が増えている」という現状に対する強い危機感が根底にありました。全国的に増加している不登校の子どもの数は、従来通りの学校システムそのものがエラーを起こしているということを示しているのではないか。対症療法だけではなく、学校の風土や大人の「子ども観、教育観」そのものを変化させる必要があるのではないか。
そこで、プロジェクト1を通じて「子どもは自ら学ぶことができる存在であり、教員は教えるだけではなく、子どもが自ら学ぶための環境設計や授業設計を行う。子どもを信じ、子どもにコントロール権を委ねる」という授業本丸から学校風土を変化させようと、先生たちは実践を積み重ねています。
ある学校では、子どもが自ら学ぶために単元の学び方の見通しを子どもと共有することにしました。すると、教室に入ることが難しく別室登校を続けていた子どもが「これだったら自分でも進めることができる」と、1年以上もの間で一度も興味を示すことがなかった教科の学びに自ら進んで向かうことできました。別の学校では、学び方も学ぶ場所も子どもに委ねた授業を設計したところ、通級指導で個別に学んでいた子どももそれ自体が自分に合った多様な学び方のうちの一つとなり、オンライン上でつながりながら必要に応じて自然とクラスの友達との協働的な学びが発生するようになりました。また、ある学校では自宅から授業に参加している子どもが中心になって、教室にいる子どもたちと学び合いながら授業を進める姿がありました。
このように、少しずつ今までとは違った学びの形が見え始めましたが、一方でそれでも学校や集団と合わない子どもがいることも事実です。学校に行くことをゴールにせず、どのような形が子どものウェルビーイングにつながるのかについて考えていく必要があります。そのために、次回ご紹介するプロジェクト2のような取り組みも同時並行で必要だと感じています。
(プロジェクトマネージャー 小林湧)