【子どものケガを減らす(6)】 学校での水泳関連事故

【子どものケガを減らす(6)】 学校での水泳関連事故
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 水泳に関連する事故も重傷度が高い事故の一つです。

 日本スポーツ振興センターの死亡見舞金・障害見舞金の事例(2005~21年度)のうち、水泳中の事故は118件(死亡:22件、障害:96件)でした。事故発生時の状況を見ると、プールへの飛び込みスタートに起因する事故が47件(40%)、転倒・接触が24件(20%)、溺水が8件(7%)、その他が39件(33%)でした。「溺水」の8例は全例死亡していました。「その他」の死亡例は12例で、全て心臓や大血管、中枢神経系の突然死でした。

プールへの飛び込み事故

 飛び込み事故が多いため、小・中と高校1年次の体育授業では、飛び込みスタートは実施されないことになりましたが、現在でも高校2年生以降の体育授業や、体育授業以外の部活動などの課外活動では、プールへの飛び込みは禁止されていません。

 水泳競技大会に参加した高校生1922人への調査(16年)で、水泳歴の中で身体のどこかを水底にぶつけたことがあると答えた生徒は673人(35%)にも上りました。飛び込みスタート後の入水深度は、個人の体格、入水角度、スタート場所から水面までの高さ、入水後の姿勢制御などで変わり、同一人でも毎回同じではありません。日本水泳連盟のガイドライン(水深1.35㍍)を過信せず、アーティスティックスイミングの練習は、水深が3㍍のプールで行う必要があります。飛び込み事故は、「プールの構造上の問題」ですので、使用するプールの構造を知って指導法を考えることが不可欠です。

溺水事故と監視

 溺水事故は死亡率が高いのが特徴です。「プールから退水した後、子どもが水底に沈んでいた」という事例もあります。YouTubeの「Lifeguard Rescue」というチャンネルを見ると、監視の擬似体験をすることができます。

①監視の死角の把握:水面の反射は、外光、照明、天候などで変わるので、その時々のプールで反射をチェックする。監視台の利用や監視者の移動によって死角をコントロールする。

②指導方法・運用方法:自由に泳ぎ回る児童生徒を十分に見守ることは難しい。児童生徒への指導方法やプールの運用方法で監視の限界を補う。「生徒同士のバディシステムの徹底」「見学生徒による監視の補助や報告」「一方通行など、コース利用のルールの設定」「水泳帽子の色分けやナンバリング」「明るい赤系統の水着で見やすくする」

接触・転倒事故

 プールサイドは滑って転倒しやすく、水泳時は皮膚の露出部分が多いためにケガを負いやすくなります。水中やプールサイドでの人との接触、プールサイドでの転倒、プールの壁や床への衝突などがあります。

 これまで、児童生徒の水泳中の事故の発生機序はよく分かっていませんでした。自動車事故の検証にドライブレコーダーの記録を用いるように、プール活動を録画しておけば、より厳密に事故の検証を行うことができるようになります。

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