今回はプロジェクト3の「未来は自分で創る」における小学校の実践について紹介します。石川県加賀市では「問いを立て続ける」「教科横断的に探究する」「課題解決する」という3つの軸を持った子どもたちを育成できるよう、小中学校の9年間を通じた系統的なSTEAM教育プログラムの整備を目指していますが、その先駆けとして授業が行われている2023年度STEAM先行実施校の様子を紹介します。
6年間の流れとしては、まず1・2年生で基礎的な考え方を体験して、プログラミングへのワクワクや気付きを得ます。続いてScratch(※1)を利用して、3年生ではゲームづくりを通して思考の手順を意識して試行錯誤し、4年生ではプレゼンづくりを通して自分の考えをプログラミングで表現します。そして、5年生でmicro:bit(※2)を利用して身近な生活上の課題解決を行った上で、6年生ではそれまで学んできたことを利用して地域や社会の課題解決に挑戦します。
先行実施校の河南小学校では、地域や社会の課題を解決する活動として、「学校の体育館が避難所となった際に、目や耳、体の不自由な人にとっても過ごしやすい場所にするには?」というテーマで、総合的な学習の時間で行っていた福祉分野と関連させて取り組みました。それぞれチームに分かれて活動し、目の不自由な人に対してはトイレや段差など空間についての音声案内が近づくと流れる装置をScratchで作成したり、耳の不自由な人には避難生活における案内がmicro:bitに文字で表示される腕時計型の道具を作成したりしました。
この活動では、これまで総合学習で学んできた知識や経験をもとに「どんな点で困るのか?」「どんなものがあると助けられるのか?」と児童はたくさんの問いをつくりながらアイデアを形にしました。また、総合学習だけでなく、社会の授業でテーマに関連する知識を学んだり、国語の授業で活動を進めていく上で重要になるコミュニケーションについて学んだりし、教科横断的に授業を進めました。
これらの活動に対して児童の声を聞いてみると、「命令が間違っていると動かないことがあるけど、どこがおかしいか考えて改善していくことが楽しい」「いろいろなことができて人を助けるときに役立つことを感じた」などといった声がありました。
加賀市では外部人材の力を借りてプログラミング学習や探究的な学びを支援する授業を行っていますが、この実践のように他の教科ともつながり「問いを立て続ける」「教科横断的に探究する」「課題解決する」ことがさまざまな場面で促進されると理想的なSTEAM教育だと考えます。次回は中学校でのSTEAM教育の実践について紹介します。
(プロジェクトマネージャー 寺西望)
※1 小学生から使うことができるプログラミングアプリ。簡単な操作で高度な作品・ゲームなども作ることができる。
※2 音を出したり、LEDランプで光を点灯させたりできる超小型コンピューター。プログラミングで操ることができる。