新しい年となった。今夏の教員採用試験まで半年と少しであるが、試験対策・勉強は進んでいるだろうか。ここでは今夏の試験を目標とした、約半年でできる論作文の対策を紹介しよう。
昨今の教育課題に関するキーワードを軸に学習するとよい。インターネットで、「教育 ニュース」「教育 新しい課題」などで検索する。本紙の読者であれば、検索してピックアップされてきた事項の重要度はある程度判別がつくだろう。重要度の高いものから覚えていくようにする。もちろん課題の幅は広いので、ある程度絞った方がよい。重要なキーワードの多くは、令和の日本型学校教育、学習指導要領につながっているので、やみくもに覚えようとしなくてもよいだろう。まずこの2つに関するものをよく読み、そこから具体的な項目に広げていくのが効率的である。
また、関連する資料などを集める場合は、文科省のサイトはもちろん、受験する自治体の教育委員会のサイトを軸に調べていく。
各自治体の試験では、論作は600字、800字、1000字などで書くように字数が決められている。
論作文である以上「テーマ」に合わせて書くための手だてが必要となる。例えば、「あなたの学力観にも触れながら、専門科目において学力向上をどのように図ればよいか、1000字で書きなさい」というテーマが提示されれば、それについて論述していくことになる。
これについては、(1)自己の学力観について論じる(2)学力向上のための具体的な手だてと経験から学んだこと――の2つを必ず書くことが必須条件となる。
論作文の勉強を進めていくと、結局は自分の教育に対する考え方がしっかりしていないと書き進められないことに気付く。教育観、学校観、教師観、子供観、授業観、学習観、指導観などについて、自分の考え方を確かにしておかなければならない。
論作文と作文の違いが分からないまま書いていることが少なくない。作文から抜け出せない場合、文末表記が「思います」「考えます」の連続であることが多い。論作文を心得ている場合は、「認識しています」「把握しています」「判断しています」などを用い、印象を変えるようにする。
やむを得ず「思う」「考える」を文末に使う場合でも「大切」「大事」「必要」「重要」「不可欠」などを使い分ければ重みづけがしやすくなる。
また、自分の好きな小説や論説、映画などを取り上げると、「書くこと」に慣れることができるだろう。書くことに慣れれば、論作文を書くときに必要な基礎知識が確かになる。
採点官は何を見るのか。それは、受験者が正解を書けているかどうかではない。指導を具体的に考えられるかどうかである。そこで文章の冒頭は、実践の話から入るとよい。それも正解である必要はない。こんな実践をやってみたいという自分の思いを伝えよう。やってはならないのは、今の社会状況・教育状況を憂えることと、自分がその救世主になるんだ、などと示すことである。
考えてから書いてはいけない。書いてから考える。ともかく書いてみる。次に形を整える。段落取り、単文・短文化、箇条書き、といった形を整える。それから内容を整える。抽象論や美辞麗句、あるいは空熱意の振り回しになっていないだろうか。いい子ぶってはいないだろうか。具体的な話で書いているだろうか。論作文は、たくさんのことを書いてはいけない。削って、削って、一つのテーマで書く。同じテーマで、何度も書き直してみよう。すると、どんなテーマでも書けるようになる。
各自治体から出題されるテーマは、大きく分けて次の項目が目立つ。
▽学力向上に関すること=学習指導、授業改善
▽いじめなど生徒指導に関すること=いじめの認識、対策、担任としての指導
▽学級経営に関すること=居場所づくり、支持的風土の学級づくり、向き合う・寄り添う学級づくり
▽心の教育=教科道徳の進め方と評価、自己肯定感
▽人間関係づくり=認め合い・関わり合い・支え合う人間関係づくり
▽体力向上に関すること=一学級一運動、体力状況調査の結果
以上の6つのテーマについて論作文を書けるようにしておくことが求められる。論述する上で使いたい語句を上手に散りばめ、その精度を上げて構成していくといいだろう。例えば「よりよい授業をつくっていく」を「目標の明確化を軸にした授業の構築」とする。あるいは「一人一人を大事にする学級づくりをしていく」を「一人一人の居場所を大事にする支持的風土の学級づくりをしていく」とする、などができるようになるとよいだろう。
論作文の精度を高めるとは、問いに対して正対した上で、テーマに関する適切で質の高い、洗練されたキーワードで表現できることでもある。ワンランク上を目指す論作文にするために、皆さんも表現力を高めてほしい。