前回まで、先天的な気質を踏まえて、後天的に意識を働かせて行動を変え、その行動を習慣化していく中で、何らかの非認知能力を伸ばすことが期待できると説明してきました。そして、そのために大人が子どもたちにできる働き掛けについても紹介しました。
こうした働き掛けは、教育現場において教師がこれまでも行ってきたことではないでしょうか。子どもたちに大切にしてもらいたい価値観を伝えて共有したり、価値観から生まれるイメージと実際の行動とのズレや一致について教えたり、習慣化してほしい行動を見つけて褒めたりといった働き掛けは、教師が日常的に行っていることばかりです。
なお、こうした働き掛けは、子どもたちに強制・強要をするのではなく、子どもたちが何らかの意識を持てるきっかけを提供しているのであり、「押し付け」ではなく「意識付け」をしている点が特徴的です。私は、さらにこの意識付けを2つに大別しています。
1つ目は、教師が子どもたちを見取ってフィードバック(褒めるなど)をする「直接的な意識付け」です。2つ目は、教師が直接フィードバックするのではなく、授業や特別活動などを通じて、子どもたちが自ら気付いて意識できるように仕掛けていく「間接的な意識付け」です。教師は、子どもたちの非認知能力を伸ばすために働き掛け、ひいては人格形成を支えるために、この2つの意識付けをあらゆる場面で実践しているのではないでしょうか。優れた教師であればなおさらです。
「非認知能力」という言葉が注目を集める中で、なんとなく特別で新しいことに取り組まなければならないように思われがちですが、実はそんなことはありません。これまでも個々の教師たちが力を注いで来た実践そのものが大事だからです。ただし、これまでは「できる教師」による個人的な実践にとどまってしまいがちであったことも否めません。学習指導要領が改訂され、「学びに向かう力、人間性等」という非認知能力を涵養することが明示された以上、これからは個人的な実践ではなく、組織的な実践になることが求められます。つまり、教育現場では、「チーム学校」として子どもたちの非認知能力を伸ばすための実践(直接的な意識付けや間接的な意識付け)ができるようになる必要があるのです。
そこで次回からは、チーム学校で具体的に取り組むための「教育実践ステップ5.0」について紹介していきます。