公益社団法人 子どもの発達科学研究所 所長・主席研究員
不登校対策、いじめ対策と聞いたら、皆さんは何を頭に思い描くでしょうか。そして、皆さんの学校では、どのような対策や取り組みを行っているでしょうか。
果敢にも学校風土の向上に学校全体で取り組み、成果を上げた学校が日本にもあります。今回は、そうしたケースを紹介しましょう。(事実をアレンジして紹介しています。) ケース1:子どものスキルを高めることで学校風土向上を成し遂げた小学校 中規模の小学校。学力も高く、問題行動もないのに、なぜか不登校が増えていることから、学校風土を測定しました。
学校風土が子どもたちの行動にどのような影響を与えるのかについては、たくさんの研究があります。例えば、ポジティブな学校風土が不登校、いじめ、薬物使用などを予防することは、よく知られている事実です。また、子どもの学習意欲を高めて学力を向上させますし、大学進学率を高め、中退を防ぐことも分かっています。
日本学校風土尺度「JaSC」で測定すると、当然ですが結果が出ます。私が所属している子どもの発達科学研究所のシステムを使うと、学校・学年・クラスの各段階で、学校風土が平均的なのか、それとも良いのか悪いのかについて明らかになります。JaSC改訂版の場合、20ある各項目ごとに、どのような状況なのかが明らかになります。
学校風土を向上させるためにはどうしたらいいのか、気になるところですが、その前に学校風土の測定について、さらにお話ししておきます。2017年に日本学校風土尺度「JaSC」を開発して以来、たくさんの学校が学校風土の測定を行いました。その結果、いじめや不登校の予防に成果を上げた学校もありました。ただ学校風土の測定には経費がかかりますし、労力も時間も必要です。
私たちは2017年に学校風土尺度「JaSC」を開発し、その後たくさんの学校でデータを収集してきました。そのことにより、幾つか分かってきたことがあります。例えば、データを統計的に解析し、その情報量を明らかにしたところ、日本の子どもたちが重視している項目が明らかになりました。その中から、特に重要だと思われる5つの項目を紹介しましょう。
文部科学省委託事業「子どもみんなプロジェクト」は、2015年に始まりました。当時すでに社会問題化していた、いじめ、不登校といったことに、科学を使って解決していこうということで、大阪大学をはじめとする10大学がコンソーシアムを組み、それぞれの地域の教育委員会と連携して、研究とその社会実装の両方に取り組んだものです。
学校風土がどんな要素によって構成されているのかについて、世界の研究でより明らかにされていることは前回説明しました。今回は学校風土が何なのか、代表的な考えを紹介していきたいと思います。まず、アメリカのニューヨークに本部を置くNational School Climate Centerでは、学校風土の要素を「安全」「教えと学び」「人間関係」「環境と位置付け」「教職員」の5つに分けて説明しています。
2023年3月31日、永岡桂子文科相(当時)の下、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」が取りまとめられました。この中に、以下のような文言がありました。学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする。学校の風土と欠席日数には関連を示すデータあり。学校の風土を「見える化」して、関係者が共通認識を持って取り組めるようにし学校を安心して学べる場所に。
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