私の研究室で、自閉スペクトラム症(ASD)の生徒の余暇の過ごし方を調べたことがありました。「自由な時間にどんなことをしていますか?」という質問に、「カードゲーム」「アニメを見る」「音楽を聴く」「マンガを読む」「ライトノベル(ラノベ)を読む」「ネットを見る」など中高生らしい回答がありました。一方、「やってみたいけれど、できないことはありますか?」という質問には、「友人と共に遊ぶこと」「友達と遊びに行きたいけれど友達がいないのでできない」「同じ趣味の友達がゼロ」などの回答がありました。
また、これとは別に行った調査ですが、友人関係について質問したところ、「同じ学年には全く友達がいない」「学校では皆から疎外されるだけ」「放課後は一人で過ごすことが多い」「休み時間はいつも図書館で本を読んでいる」などの回答がありました。友人関係で満足できておらず友人を求めていること、しかしそれが容易でないことなどが、これらの調査結果からうかがえます。
最近、家庭・学校に次ぐ第三の場所、いわゆる「サードプレイス」の意義が注目されています。無理せずリラックスして、ありのままの自分が出せる居心地の良い場所のことです。興味・関心を分かち合える仲間と一緒に楽しく過ごせる所でもあります。ASDの子どもたちは仲間づくりが不得意ですが、先述した彼らの声からも分かるように、気の合う仲間と一緒に好きなことを楽しみたいという気持ちを持っています。そのような願いをかなえるための場所としてサードプレイスがあることは重要な意義があります。
当然のことですが、学校生活では自分の好きなことばかりできません。ルールや周囲の動きに合わせなければならないので気を張ります。ASDの子どもは少数派の特性を持つが故に周囲に合わせることに定型発達の子ども以上に努力と緊張を強いられることが多く、学校生活に適応するために精神的なエネルギーを大量に使います。消耗したエネルギーを補充するために余暇活動の意義は大きいのです。
余暇活動では自分が好きなことだけに没頭できるので、精神的な疲労を回復できます。その点でもサードプレイスがあることの意義があります。余暇活動支援はASDの子どもたちの健全な育ちを支えるために、これからさらに重要な役割を果たすことでしょう。(おわり)