今回は次のステップへ歩を進めることにしましょう。このステップでは「ギミック(仕掛け)」がカギになります。これまで、極力皆さんに聞きなれない横文字を避けてきたのですが、今回だけはこの横文字を使わせてください。
ステップ1.0において言語化してチーム学校で共有した学校教育目標や行動指標があれば、ステップ2.0で教師は日常的に子どもたちを見取ってフィードバックしていけるでしょう。すると、教師と子どもとの間に価値が共有されて、良い行動が習慣化されていくことが期待できます。これを「直接的な意識付け」と呼びます。
ステップ3.0では、このように直接的に意識付けを試みるのではなく、あくまでも間接的に意識付けを試みる段階になります。つまり、教師は直接褒めませんし、助言や示唆もしません。教師は別に直接的でなくても、授業や特別活動などの教育活動の中で、子どもたちが「もっと○○したい(しよう/しなきゃ)」という意識を持てるような仕掛けを入れていくことができるのです。
例えば、あえて難しい問題を提示してみたり、興味を引くような実物を見せてみたり、協力が必要なグループ活動を入れてみたりといったことを意図的に仕掛けることで、自分と向き合う力や自分を高める力、他者とつながる力などを子どもたちが意識できるようにしていきます。このときの仕掛けを「ギミック」と呼んでいるのです。
ところで、なぜ仕掛けと呼ばずにギミックという横文字を使っているのかについて少し説明しておきます。実は、ギミックとはただの仕掛けではなく、「感情を動かす仕掛け」という意味で使っています。このステップ3.0では、教育活動を通して(間接的に)子どもたちの何らかの非認知能力を意識付けていきたいわけです。そこでは「感情を動かす」ということが非常に重要なポイントになります。「きつい→がまんするぞ」「楽しい→やる気出たぁ」といった具合に、子どもたちの感情が動くときには何らかの非認知能力が意識されていることが期待できるでしょう。
従って、例えば授業を通して子どもたちの非認知能力を間接的に意識付けたいときには、授業の中で子どもたちの感情を動かすギミックを入れていくことをお勧めします。しかし、これもとりわけ新しいことではありません。授業の中で子どもたちの感情に抑揚を付けていくことは、これまでも卓越した授業者の頭の中にあったからです。
そして、そんな授業者の授業は、得てして子どもたちを「前のめり」にしていたのではないでしょうか。そんな前のめりになれる授業こそが、認知能力と非認知能力を一体的に育成しようとしてきた授業だったと言えます。