第2回 不適切な行動へのアプローチ

第2回 不適切な行動へのアプローチ
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 授業中に関係ない話を大きな声で話す。決められたルールを守ろうとしない。自分勝手な行動をする…。学級の中には不適切な行動がたくさんあります。また、机に伏せたり、活動への指示を無視したりするなどの無気力を示す行動も、不適切な行動と言うことができるでしょう。これらを容認すると学級が「荒れ」始めてしまうので、注意をしたり、時には厳しく指導したりするのですが、その数はなかなか減っていきません。

 上越教育大学教授の赤坂真二氏は、こうした不適切な行動は「居場所を確保するための適応行動」であると述べています。大声を出したり、立ち歩いたり、あるいは机に伏せたりすれば、教師が自分に注目してくれることを子どもたちは知っているのです。それに注意を繰り返し、腹を立ててしまうと、この子どもたちの目的を果たすことになってしまいます。そこで赤坂は、不適切な行動にできるだけ注目せず、適切な行動に注目することが重要であると述べています。不適切な行動への注目を最低限にとどめることでその意味をなくし、逆に適切な行動をしている瞬間を見つけて喜んだり感謝したりすることで、意味を付与していくのです。

 過去に、嫌なことがあるたびに廊下に出て、壁を蹴りだす児童に出会ったことがありました。きっと、今までもそうして注目を集めていたのでしょう。蹴るたびにこちらを確認しているのが分かりました。周りに危害はなかったので、しばらく様子を見ていると、大きな音を立てて教室の扉を開け、ドカッと席に座りました。私の方をちらっと見た彼と目が合ったので、何も言わずに笑顔でうなずきました。

 その翌日、運動会の練習中にうまくいかずに悔しがる仲間に「でも、ここまでできたじゃん」と声を掛ける彼の姿が目に留まりました。この適切な行動に注目し、意味を付与したいと思い、「前向きな言葉が広がるとクラスの雰囲気が悪くならないよね」と彼の言葉をみんなに紹介しました。彼は照れくさそうにしていましたが、翌日からも「ドンマイ」「次、頑張ろう」と前向きな声掛けを続けていました。

 すぐに全てが改善するわけではありません。また、周囲への影響や危険がある場合は、もちろん静止や指導が必要です。それでも、できる限り適切な行動への注目を続けていこうとすることで、少しずつ不適切な行動を減らし、荒れを防ぐことができます。

 赤坂真二『アドラー心理学で変わる学級経営 勇気づけのクラスづくり』(明治図書・2019)

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