第6回 学校風土は測定しただけでは始まらない

第6回 学校風土は測定しただけでは始まらない
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 学校風土を向上させるためにはどうしたらいいのか、気になるところですが、その前に学校風土の測定について、さらにお話ししておきます。

 2017年に日本学校風土尺度「JaSC」を開発して以来、たくさんの学校が学校風土の測定を行いました。その結果、いじめや不登校の予防に成果を上げた学校もありました。ただ学校風土の測定には経費がかかりますし、労力も時間も必要です。そのため、校長や教育委員会担当者の意欲が必要です。当時は今ほど学校風土への注目がありませんでしたので、担当者の異動や予算の打ち切りなどにより、なかなか長く続けられませんでした。

 しかし、今や時代が変わりました。学校風土の向上が不登校やいじめなどの予防効果に期待できることについて、COCOLOプランで触れられたこともあり、多くの学校、教育委員会が導入しようと検討しているようです。ただし、学校風土を科学的に正しく計測することは困難です。学校風土と言いつつ、子どもの問題(例えば、子どもの満足度や適応度など)を計測して、学校風土であるかのように見せている調査もありますので注意してください。

 さて、JaSCを使って学校や教育委員会でアンケートをしてみても、実はそれだけでは学校風土はよく分かりません。なぜなら、JaSCはアンケート項目にすぎないからです。例えば、「この学校の先生は、私がうまくできた時に認めてくれる」という項目について回答を得たとしても、その数値(例えば、平均の値)が明らかになるだけです。その数値が何を意味するのかについては明らかになりません。もちろん、複数回実施したり、多くの学校で一度に実施したりすれば、学校風土の変化や他の学校と比べてどうかは分かるかもしれませんが、それを学校や教育委員会レベルで明らかにするのは、なかなか手間が掛かります。

 そこで必要になるのが統計解析です。子どもの発達科学研究所では、これまでのたくさんのデータから基準を設定し、それと比較してその学校・学年・クラスの学校風土がどういう状態であるのか、明らかにするシステムを提供しています。そうすることで、自分の学校やクラスが平均的なのか、それとも良いのか悪いのかだけでなく、学校風土の要素ごとの状態、学校風土向上のために何をすべきかまで分かってきます。

 実際、学校風土調査は単なる学校風土の物差し(ただし、科学的に正しい)、道具でしかありません。問題はその結果をどう受け取り、学校風土の向上にどう生かすのかということになります。

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