いよいよ今回で最終回となってしまいました。読者の皆さんには限られた文字数の中でできる限りお伝えしようとしてきましたが、十分お伝えできなかったのではないかと反省しております。今回の私からの提案にご興味を持ってくださった方は、拙著『教師のための「非認知能力」の育て方』(2023年、明治図書)を参照ください。今回の内容をさらに詳しく、さまざまな事例も交えながら説明しています。
さて、最終回となる今回はステップ4.0と5.0について話を進めていきます。4.0の方は子どもたちの評価です。今、教育現場では「学びに向かう力、人間性等(非認知能力)」という極めて評価が困難な力を「主体的に学習に取り組む態度」を観点にして評価することが求められています。言うまでもなく、この場合の評価には成績の評定というものも含まれているわけです。
私がこれまで関わってきた小中高校でも、この評定を含んだ評価について試行錯誤してきました。その上で、子どもたちの単元ごとなど定期的な振り返り(主に言語化)によって評価をするところが主流となり、さらにこの振り返りに対して独自の評価基準を子どもたちに公開することで評定に結び付けるという学校が増えてきています。さらに、行動指標を子どもたちと共有した上で、各行動指標について5段階程度で自己評価ならびに相互評価を行って、(客観的ではないにしても)定量的な評価を試みているところもあります。非認知能力の評価に困難さを感じながらも、現場の実践者たちの挑戦はこれからも続いていくことでしょう。
しかしながら、教育実践とはあくまでも目的意識的な働き掛けです。つまり、教師や子どもがなんらかの非認知能力を伸ばしたいという目的を持ち、その目的に向かって働き掛けることが前提であり、その働き掛けの評価こそが先ほどの子どもたちの評価なのです。
もちろん、現状を把握することは必要です。この現状から、目的を見つけて方針を立て、実行に移した成果と課題が子どもたちの評価に表れるわけなので、子どもたちの評価は教師の評価と言ってもよいでしょう。
従って、ステップ4.0と5.0との間に境目はありません。その点では、これまでも認知能力は評価しやすかったため、より一層教師側の資質が求められてきました。例えば、今学期の生徒たちの数学の点数が全体的に低いことについて、生徒たちのせいにする数学教師はいないはずです。教師は自らの授業などを振り返り、生徒たちの数学の力を高めるために、次学期以降の授業の改善に努めることでしょう。この点は非認知能力についても同様のことが言えます。目的を持ち、方針を立て、実行して振り返って改善へつなげていく。まさに「反省的実践家」です。
このように、非認知能力を切り口として教師の実践を改めて捉え直してみると、教育や教師の本質について考えさせられるものがあります。今、わが国の教育もさまざまな変革を求められていますが、その一方で本質に基づいた「教育の不易」についても大事にしていきたいものです。(おわり)