学級経営が充実すると、自然と問題行動は減っていきます。それどころか、子どもは自らの学びや成長のために、自信を持って行動するようになります。そして、子どもに自立の力や姿勢が育ってくるのです。
最初の1カ月で担任が意識したいことは、「子どもの前向きな気持ちを高めること」です。
「今年は頑張れそうだ」
「みんなと一緒に充実した生活を送れそうだ」
「自分らしく過ごせそうだ」
「より成長できそうだ」
このような前向きな気持ちを持たせていくのです。
前向きな気持ちが高まると、高い目標も描けるようになります。自分が心から実現したいと思える高い目標を描き、自分が成長した姿をイメージできるようになります。そうすれば自然と、その目標に向かって行動するようになります。その結果、問題行動が減り、むしろ昨年度までとは打って変わって頑張る行動が増えていくのです。
最終的には、互いの目標を高め合いながら切磋琢磨(せっさたくま)する集団に成長していきます。学級集団がこのように成長できるかは、最初の1カ月の取り組みに左右されると言っても過言ではありません。
さて、一口に「前向きな気持ちを高める」と言いましたが、この「前向きな気持ち」の内容は多岐にわたります。個人のモチベーションもありますし、集団に対してのポジティブなイメージもあります。さらに「前向きな気持ちを高める」ための順番もあります。
まず、出会いで大切にしてほしいのは「子どもの自己評価を高めること」です。学級開きで全員の名前を呼び、一人一人を「褒める・認める・励ます」ことを強く意識しておくことが大切になります。
荷物を運ぶなどの教師の手伝いをする場面、簡単なゲームの場面、教室を整理整頓する場面などさまざまな場面で頑張っている行動を見つけ、声掛けをしていきます。「さっと行動している人」「ポジティブな発言をした子」「あいさつを大きな声でした人」といった子を見つけ、「その子の自己評価が高まる」声掛けをしていきます。特に、昨年度まで問題行動が多かった子には、複数回声掛けするぐらいの意識がほしいものです。
最初の出会いで教師から自己評価が高まる声掛けがされるから、子どもは「今年は頑張れそうだ」と思えるようになるのです。
【プロフィール】
大前暁政(おおまえ・あきまさ) 公立小学校教諭を経て、教員養成課程の教授として教育方法や理科教育に関する教職科目を担当。文部科学省委託体力アッププロジェクト委員、教育委員会要請の理科教育課程編成委員などを歴任。研究分野は、教育方法、理科教育、学級経営、生徒指導、特別支援教育、科学教材、教授法開発、教師教育など多岐に及ぶ。最新刊『本当は大切だけど、誰も教えてくれない授業力向上42のこと』(明治図書出版)など著書多数。