第1回 遊びでつなぐ教育論―遊びの世界地図

第1回 遊びでつなぐ教育論―遊びの世界地図
【協賛企画】
広 告

 初めまして。東京都の公立小学校に勤めています安藤浩太と申します。ANDYと呼ばれながら、日々子どもたちとワイワイ楽しく過ごしています。

 著名な研究者でもなければ、授業の名人でもない、一公立小学校の教員である私のもとにある日、この連載の依頼が舞い込んできました。聞けば、「遊びと学び、そして授業」をテーマにということでした。

 依頼いただいたように私は遊びに関心を持ち、遊びで授業を創ることを目指して10数年にわたり、実践と研究を積み重ねてきました。遊びに恋焦がれ、魅せられてきた一人として、また悪戦苦闘しながらもそういった取り組みを実践し、言語化してきた身として、この記事の執筆を喜んでお引き受けしました。

 とはいえ、私も最初から遊びで授業を創ろうとしていたわけではありませんでした。そもそも小学校では、暗黙のうちに遊びと学びは分けて捉えられているように思います。休み時間は自由な遊びの時間で、授業時間は勉強する時間というようにです。

 でも、本当にそうなのだろうか。勉めて強いる、まさに「勉強」が学びの全てでよいのか。そういったモヤモヤを常に心のどこかに抱えていました。そして、実践を積み重ねるうちに、遊びと学びは混然一体なのではないかと強く思うようになりました。

 授業中、楽しくて仕方なくて体がどんどん前のめりになり、最後にはお尻が椅子から浮いてしまうくらい夢中で手を挙げる姿。休み時間になっても「まだ解決していないからもっと話し合いたい!」と言って、黒板の前に出てきて授業の板書に書き足しながら友達と話し合っている姿。実践を重ねる中で、そういった子どもたちの姿に出合ったのです。それは、授業に夢中・熱中・没頭する子どもたちの姿でした。

 その時、思ったのです。「あれ、これって子どもたちは遊んでいるんじゃないか」と。確かに形態としては、ある時は国語科の話し合い活動ですし、ある時は生活科の体験活動です。でも、子どもたちの内側にはワクワク・ドキドキが溢れていました。そして、そんな授業ほど学びは広がりどんどん深まっていきました。

 そんな子どもたちの姿からでした。私が遊びで授業を創ろうと思ったのは。とはいえ、「遊び」で授業を創る試みは葛藤と苦労の連続でした。

 ・そもそも遊びとはどのような現象なのか。

 ・遊びに教育的な価値はあるのか(遊びと学びの関連はあるのか)。

 ・小学校という場、決められたカリキュラムがある中で、遊びは生まれるのか。

 本連載は、遊びで授業を創ってきた、そんな私の歩みを記す「遊び冒険(時々放浪、まれに迷走)記」です。冒険のガイダンスとして、遊びの世界地図を載せました。ここまで見聞きしてドキドキワクワクを感じた皆さん、ぜひお付き合いいただけたらと思います。

遊びの世界地図(安藤浩太『そこに、遊びがある授業』東洋館出版社、2023より引用)
遊びの世界地図(安藤浩太『そこに、遊びがある授業』東洋館出版社、2023より引用)


【プロフィール】

安藤 浩太(あんどう・こうた) 1989年鹿児島県生まれ。東京都公立小学校に勤務。日本国語教育学会会員。全国大学国語教育学会会員。日本生活科・総合的学習教育学会会員。国語科教育と生活科教育を中心とした低学年教育を研究や実践の主なフィールドとし、遊びで授業を創ることを目指している。2018年「第67回読売教育賞生活科・総合学習部門優秀賞」受賞。20年「第22回がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞。著書に『そこに、遊びがある授業』(東洋館出版社)、『スタートカリキュラムと教科をつなぐ 小1担任の授業術-遊びと学びでつくるPlay型授業』(明治図書出版)など多数。

広 告
広 告