第4回 静かな「荒れ」を考える

第4回 静かな「荒れ」を考える
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 教室の「荒れ」と聞いて、皆さんはどのような状態を思い浮かべるでしょうか。おそらく、反発や暴言・暴力、物が壊れたり、トラブルが頻発したりといった、手に負えない状況をイメージされるのではないかと思います。

 しかし「荒れ」はこのような分かりやすいものだけではありません。むしろ近年では、一見学級が機能しているように見えるのに、教師の声掛けに反応がなかったり、学習に無気力であったりといった、分かりづらい荒れ方が問題になっています。白梅学園大学教授の増田修治氏は、表面的に荒れているわけではないが子どもの心の中に学校教育や教師への不満が渦巻いているこの状況を「静かな荒れ」と称しています。現在の子どもは本音を言えず、「『良い子』を振る舞う子」が増えているというのです。また、同論文の中では「良い子」という仮面をかぶっている中で、不満や鬱屈した気持ちを「いじめ」という形で解消している部分がある点も危惧されています。

 先生の言うことを静かに聞き、指示に従い、規則を順守する。「学校」は「良い子」で居なければいけない場所です。そんな場所で、子どもたちが覚えることは、きれいな表面をつくること。つまり、子どもたちを表面的に「良い子」にさせているのは学校そのものかもしれないのです。

 きれいな表面をつくることばかりに執心し、子どもたちの本心に目を向けてこなかった結果が「静かな荒れ」なのだとしたら、それを食い止めるためには本心や本音を言える雰囲気をつくり出していくことが重要になります。

 そこで鍵を握るのが、実際に子どもたちが本心や本音を打ち明けたときにどのような対応を取るかです。子どもたちは器用な物言いができるわけではありません。腹が立つような申し出もたくさんあるでしょう。しかし、「その前に、まず口のきき方を考えなさい」と頭ごなしに叱ったり「いや、それはね」「でもね」と否定したりしたら、子どもたちが率直に本心を伝えにくることはなくなります。

 「黒板の字が読みづらいです」と言われたときに「だったら、席替えのときに言いなさい」「眼鏡を買うべきでしょう」と言うのか、「そうなんだ。ぼやけて見えるの?それとも前の人で見にくいかな?」と傾聴の姿勢を示すのか。そんな日常の中にあるささいな対応の違いが、子どもたちの本音を引き出します。

増田修治・井上恵子(2020)「『学級がうまく機能しない状況』(いわゆる「学級崩壊」)の 実態調査と克服すべき課題 ―1998年度と2019年度の学級状況調査を比較して―」(白梅学園大学教職教育・研究センター)

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