第6回 「なんだか良くないな」と感じたときのアプローチ

第6回 「なんだか良くないな」と感じたときのアプローチ
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 教室で起こる「荒れ」は分かりやすいものだけではありません。人のことをあざけるように笑ったり、みんなの頑張りや高まった雰囲気に水を差す発言をしたり・・・。むしろそうした「なんだか良くないな」と感じる行動が気になることの方が多いでしょう。

 明らかに良くない発言や行動に対してはこちらも自信を持って指導ができるのですが、中にはどう指導してよいか迷ってしまうようなあいまいな問題も存在します。しかし、こうした小さな問題を野放しにしておくと、気付かないうちに教室の荒れが進行していってしまうことがあります。

 そんなときに効果を発揮するのが、子どもたちに尺度を与えるアプローチです。実際に、冒頭で挙げたような嘲笑や冷やかしが聞こえてきたときには、「温度」という言葉を使いました。

 まず子どもたちに、「先生は教室には温度があると思う。温かい教室とか冷たい教室って言われるとイメージが付かない?」と語り掛け、続けて「じゃあ、教室を冷やすのはどんな行動だと思う?」と問い掛けました。「悪口」「暴言」「暴力」など、子どもたちから出てくるのは、はっきりとした問題行動です。そこで「それは確かに教室がとても冷たくなってしまうね。でも、もっと小さなものもある。1℃ずつでも、積み重なると教室が冷え切ってしまうよ」と問い返しました。

 すると今度は、「そっけない返事」「物の渡し方が雑」「落とし物を拾ってくれない」など、だんだんと細かなところにまで目が向けられるようになっていきました。最後に「逆に少しだけ教室を温める行動にはどんなものがある?」と続け、小さなポジティブ行動を出し合ったところで、この話を終えました。

 「悪口はやめよう」「人を傷つけてはいけない」などの一つ一つを禁止していく指導だけでは、複雑な子どもたちの問題行動をカバーしきれないことがあります。ただ、禁止をすれば問題行動がなくなるわけではなく、むしろ禁止する意味が伝わっていないと「悪口でもないし、傷つけるつもりもないからよい」というグレーゾーンが生まれてしまうのです。

 しかし、「温度」という尺度のあるものに例えた指導をすることで、複雑な子どもたちの行動をも包括することができます。先生に怒られるか許されるかではなく、みんなの前でしてよいことか、しない方がよいことかを自分で考えられるようにしていくことで「なんだか良くない」行動を自分たちで控えたり、振り返ったりすることができるようになっていきます。

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