第4回 遊びになる条件① 快楽性:楽しくなる

第4回 遊びになる条件① 快楽性:楽しくなる
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 さあ、遊び冒険記も中盤。ここからは遊びで授業を創る上で大切になる、ある活動が遊びになるための3つの条件について考えていきます。まず初めは「楽しくなる(快楽性)」についてです。遊びの世界地図で言うと真ん中の辺りにある「低学年の世界」。その中の6つの浮島。競争競技場に、模擬劇場、創造LABOに収集博物館と楽しそうな文字が並びます。今回は、ここが話題の中心になります。

 遊びにもある一定の形態があり、それが快楽性を満たす鍵となります。遊びは遊び手の心の揺れ動きによって成立するものではありますが、一般的に多くの人が遊びだと認識し、楽しさを感じやすい行為や活動というものは確かにあるのです。

 そして、それらを整理・分析していくと、ある一定の形態的な類型が見えてきます。ここでは、先に挙げた社会学者のロジェ・カイヨワや教育学者の山田敏の主張する遊びの類型について整理しながら、私なりの遊びの類型を解説していきます。

 カイヨワは古今東西の遊びの形態を整理・分析し、競争や闘争の遊びである「アゴン」、さいころ遊びに端を発する偶然性・運の遊びである「アレア」、ごっこ遊びや演劇のような模倣したり演じたりする遊びである「ミミクリ」、倒錯する感覚を楽しむ目まいの遊びである「イリンクス」といった4つの類型にまとめました。山田は歴史家のヨハン・ホイジンガ、カイヨワの分類の妥当性を認めつつ、目まいの遊びである「イリンクス」を倒錯感以外も含む感覚全般を対象とした感覚遊びと発展・統合的に捉えました。また、何かを集めることに楽しさを感じる「収集の遊び」、何かを創り上げる「創造の遊び」を新たに遊びの分類に加えています。私は、教育実践に援用できるようにするため、遊びというものを広く捉えたいと考えています。そこで、山田の主張を参考にして、遊びの分類について表のように定めます。

遊びの世界地図の「低学年の世界」の部分
遊びの世界地図の「低学年の世界」の部分

 「競争・偶然・模擬・感覚・収集・創造」といった楽しさの「もと(形態)」。この「もと(形態)」を学習活動に援用していくことで、遊びになるための一つ目のスイッチである(楽しくなる=快楽性)が生まれます。例えば、漢字を学習するとき、ただ手本をなぞるだけだと楽しさを感じにくいですが、競争の要素を付与して漢字を覚えているかを競ったり、収集の要素を付与して熟語集めをしたりするだけで、楽しそうに活動する子どもたちの姿が浮かんできます。

 ここで言う「楽しい」が意味するところは、決してポジティブな側面だけを指すのではありません。遊びにおいては困難な状況に至っても、いやむしろ困難でうまくいかない状況だからこそ、快楽をもたらすことが往々にしてあり得ます。私は、その根底には、そういった状況すら遊び手が「楽しい」と感じているのだと解釈し、より広い意味で「楽しい」という言葉を使うようにしています。

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