不登校対策、いじめ対策と聞いたら、皆さんは何を頭に思い描くでしょうか。そして、皆さんの学校では、どのような対策や取り組みを行っているでしょうか。
具体的な回答として、「不登校傾向の子どもに対して、早めに家庭訪問を行ったり教育相談を行ったりしている」「いじめは早く見つけて対応するようにしている」「スクールカウンセラーに依頼して、専門的な支援を行うようにしている」といったことが思い浮かんでいて、それ以外に何も思い付かないとしたら、少し問題があるかもしれません。
不登校対策は、不登校児童生徒への支援だけではありません。いじめ対策は、いじめの被害者への支援や加害者への指導とイコールではありません。もちろん、そうした支援、指導は必要ですが、それだけでは問題です。
なぜなら、不登校児童生徒支援は、不登校になったことが前提で始まるからです。いじめの被害者支援、加害者指導は、いじめが起こったことが前提になっているからです。厳しい言い方ですが、これらは「子どもの失敗を待つモデル」と呼ばれています。
不登校になった子ども、いじめ被害者や加害者への指導支援は必要です。しかし、それだけをやっていたのでは、不登校もいじめも減りません。「子どもたちが失敗体験をして傷ついている」という事実を減らすことはできないのです。
学習指導にも同じようなことがあります。例えば、学力不振の子どもへの支援は、「勉強ができなくなった」という前提で始まります。これも子どもたち自身が「勉強ができなくなった」という失敗体験をして初めて得られる支援という意味で「子どもの失敗を待つモデル」です。
この「子どもの失敗を待つモデル」から脱却するためにも、私たちは学校風土に注目しなければなりません。ポジティブな学校風土は、いじめ、不登校、子どものメンタルヘルスの悪化などさまざまな問題を予防し、学力の向上に効果があります。
ポジティブな学校風土とは、子どもたちが安心・安全だと感じられることであり、ルール設定が明確かつポジティブな支援が行われていることです。子どもも大人も、積極的に集団に明るく関わり、楽しい学校を実現させることです。
それを実現させるために、科学を使って学校風土を測定し、科学を使って学校風土を向上させることが求められています。もしかしたら、今までのやり方を変えなければならないかもしれません。しかし、それが子どもたちの幸せと社会の未来を創るものであるならば、やるべきだと思うのです。(おわり)