遊び冒険記も終盤に差し掛かってきました。遊びに関する知見を探し求め、定義した「快楽性」「非強制感」「属文脈性」の3つの条件。では、その3つの条件が満たされたとき、子どもたちはどのような姿を見せるのでしょうか。今回は小学1年生の生活科「学校探検」での学びの姿を追っていきたいと思います。
皆さんの学校では、学校探検をどのように行っていますか。教師が先頭に立って学校を巡る「ガイドツアー型」でしょうか。それとも2年生が1年生を連れて、順番に教室を案内する「スタンプラリー型」でしょうか。
私は学校探検が子どもたちにとって遊びになるように「ぶらぶら型」の探検を行っています。文字通りぶらぶらと、子どもたちが学校の好きな場所を自由に探検する方法です。
入学してすぐの子どもたちにとって、知らない人やものだらけの学校は実に探検しがいがあります。「バツ印が貼ってある部屋に入るのと外に出るのは駄目だよ」とだけ伝えて、後は自由に解き放ちます。そうすると、子どもたちは「え?先生本当にいいの!?」なんて言って目を輝かせながら探検を始めます。職員室にも、校長室にも、授業中の他学年の教室にも、遠慮せずズカズカと入っていきます。
そうして探検を終えると、どの子も目を輝かせて帰ってきます。ある年は、次のようなことに気付いていました。
「先生、鐘が鳴ったらお兄さんたちみんな動いていたよ。学校ってみんな時間で動くんだって」
「あのね、6年生たちがたくさん何か書いてた。かっこよかったなぁ。私もやってみたい」
「学校なのに図書館があったよ。でもね、鍵がかかって入れなかったの。今度は鍵を開けて、絵本を探してみたいなぁ」
発言の様子から学校の「人」「もの」「こと」と存分に交じり合って、関わりも教科の学びも深まっているのが分かります。「ぶらぶら型」の探検に夢中・熱中・没頭する子どもたち。遊びになるための3つの条件に照らし合わせるとその理由が浮かび上がってきます。
まず、探検それ自体が探検ごっこといった模擬の遊びの要素や収集の遊びの要素を含んでいます。そして、「ぶらぶら型」にしたことで、自分の目的に応じて行きたい場所に好きなだけ時間を費やすことができるといった、たくさんの自己選択・自己決定の機会が生まれています。そしてそれは、そもそも小学校という未知の場所に入ってきたこの子どもたちにとっての「今知りたいこと、学びたいこと」の文脈と重なってきます。さらに、一度で終わるのでなく繰り返し探検を行うことで、さらなる物語(ストーリー)が形づくられていきます。だからこそ、探検が子どもたちにとって遊びになり、夢中・熱中・没頭しながら取り組んだのです。
今回は学校探検の例でしたが、遊びで授業を創ることは、校種・学年・教科を問わずさまざまな授業で援用可能だと考えています。教師の、教科書の活動の当たり前を「遊びの3つの条件」という視点で見直してみる。その先には、夢中・熱中・没頭する子どもたちの学びの姿と笑顔があふれているはずです。