第8回 遊びになる授業をどうつくっていくか

第8回 遊びになる授業をどうつくっていくか
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 子どもたちが夢中・熱中・没頭する、遊びになる授業。実現するためには、遊びになるための3つの条件をいかに単元の中で実現していくかが鍵となります。今回の遊び冒険記は、そんな遊びになる授業をどう構想していくかを紹介していきます。

 遊びの世界地図で見えているのは、遊ぶ動物や子どもたち、それを取り巻く研究者の面々です。地図には見えませんが、その裏側には黒子(教師や大人)がいて、さまざまな働き掛けをしています。それがまさに今回のテーマでもあります。

 一般的に授業を構想するとき、中心に据えるのは「ねらい」です。単元終了時にどのような子どもたちの言動・姿を望むのか、子どもたちの思いや教師の願いを、育むべき資質・能力と重ね合わせながらねらいを描きます。その点は遊びになる授業でも変わりません。

 遊びになる授業でも、そうしてゴールから逆算的に、単元の学びの物語(ストーリー)を描きます。それを幾重にもです。幾重にも描くということは、それだけ子どもたちに自己選択・自己決定の機会を保障しているということです。さらに、学びの必然性に沿った学習活動の一つ一つにどうような楽しさの要素が内在しているかを吟味します。このように、遊びになる3つの条件を意識して単元を作っていきます。

 そのとき特に気を配るのは、子どもたちの思いや願いと教師の願い(指導性)を重ねていくことです。教師の指導性を重視するあまり、子どもたちの思いや願いをねじ曲げるのは本末転倒ですし、だからといって学びが這い回ってしまっては、結局子どもたちも学んだ手応えを感じにくくなってしまいます。そこで、学習材・環境・活動に教師の指導性を埋め込み、ねらい直結型の学習材・環境・活動になるようにしていきます。

 例えば、小学1年生の国語科・物語文の学習でよく行う劇遊び。幼児期においても役になりきり、楽しんで遊んでいますから、子どもたちにとってはなじみのある大好きな活動です。さらに、低学年の国語科のねらいとも重なり、教師の指導性を埋め込みやすい、ねらい直結型の活動だとも言えます。低学年の国語科のねらいの一つは、登場人物の具体的な行動を豊かに想像することです。劇遊びを行うためには登場人物を確認し、会話文の話者を特定しなければなりません。また、役になりきって演じるためには、登場人物の細かな行動描写に注目したり物語文の空所を豊かに想像したりする必要があります。まさに、劇遊びは子どもたちの思いや願いと教師の願い(指導性)が重なりやすい、ねらい直結型の活動であると言えます。

 そうして、教師が直接的に誘導するのではなく、さまざまな学習材・環境・活動に教師の指導性を埋め込み、子どもたちに委ねながらも学びが深まるようにします。夢中・熱中・没頭するような遊びになる授業を実現するためには、教師の指導性の発揮の仕方を柔軟に捉えたり、これまでの指導観を拡張したりする必要があると言えます。

 学習問題や板書、発問だけでなく、学習材・環境・活動などさまざまな対象に指導性を埋め込むことができるようになると、子どもたちの学習の自由度は増し、思う存分探究したり思いや願いを実現できたりするようになります。

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