妥当性とは、次の意味を含むと考えられる。(1)当該の学習評価が対象としている内容や範囲は、授業における目標と内容に正対したものとなっているかどうか(2)目標の実現状況を把握することができる評価の方法となっているかどうか(3)評価しようとしている観点別の知識や能力などを評価するのに適した評価方法となっているかどうか。
信頼性とは、評価の結果として示される学習状況の判断は正しいものといえるのか(例えば、評定結果の「4」は「5」や「3」でなく「4」で間違いないか)。
学習評価の妥当性や信頼性を高めるためには、どのような取り組みや工夫が必要か。
第1に指導計画と評価計画を一体的に進めることが挙げられる。指導計画における重要な狙いや内容を適切に評価できるよう、評価の場面と評価方法を計画的に設定する。このことによって、授業の重点事項を評価の対象として設定し双方を分離せずに、進めることができる。
第2に、評価方法の工夫改善を進めることである。例えば、ペーパーテストやワークシートであれば、評価しようとしている観点にふさわしい問いを用意することが重要である。特に「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」の評価については、問いが求めている内容がその観点に適合しているのかを吟味することが大切である。
第3に、児童生徒の記述したものや行動を評価する場合は、評価の着眼点を明確にすると同時に、評価の作業を吟味したり振り返ったりして必要に応じて調整するようにしたい。第4に、既に用いたことのある評価方法とその結果を整理し、実際の評価の際の判断基準に生かすようにする。最後に、学習評価の手続きや方法を児童生徒や保護者に説明するとともに、学習評価が児童生徒の学習の改善に生かされることを共有することも信頼性を高めることにつながる。
学習指導要領は1958年の告示以降現在に至るまで計7回の改訂を経てきたが、この中で〝ゆとり〟の言葉が用いられた改訂が2回ある。77年と98年の改訂である。
77年の改訂は、(1)人間性豊かな児童生徒を育てる(2)ゆとりあるしかも充実した学校生活を送れるようにする(3)基礎的・基本的な内容の重視とともに個性や能力に応じた教育を行う――の3点を狙いに行われた。(2)の狙いを実現するため、各教科の標準時数の削減を行い、89年の改訂まで継続される。児童生徒の在校時間を維持しながら、授業時数の削減によって生じた時数を、創意工夫を生かした教育活動に充てられるようになり、この時間を「ゆとりの時間」などと称した。この改訂における〝ゆとり〟の意味は、学習指導要領で教育内容を固定せず、各学校の創意工夫に委ねるという点にあった。
98年改訂の前、中教審は96年の答申で、「知識を一方的に教え込む」教育から、「自ら学び、自ら考える力などの『生きる力』という生涯学習の基礎的な資質の育成を重視する」との提言を行った。これを基にした98年改訂の狙いは、(1)豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚の育成(2)自ら学び、自ら考える力の育成(3)ゆとりある教育活動の展開、基礎・基本の確実な定着及び個性を生かす教育の充実(4)創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進める――の4点であった。 (2)の狙いのため、小学校では各学年約70単位時間を削減、6学年で5785から5367単位時間に、中学校では各学年70単位時間を削減、3学年で3150から2940単位時間になった。この改訂で、総合的な学習の時間を新設した。指導内容については、「授業時数の縮減以上に厳選し基礎的・基本的な内容に絞り、ゆとりの中でじっくり学習しその確実な定着を図る」ことが目指された。
2017年の学習指導要領の改訂では、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善が明示されるとともに、各教科などの目標の冒頭に各教科などの特質に応じた見方・考え方を働かせることが明記された。その特色は、教育課程全体で目指す資質・能力を、基礎的・基本的な知識・技能ほかの3つとして掲げ、それらを各教科などの目標と内容に貫いて示したことにある。各教科などの目標において、これらの3つの資質・能力を要素としながら総括的に示したものが「見方・考え方」である。国語は、「言葉による見方・考え方」、社会は「社会的な見方・考え方」、算数・数学は「数学的な見方・考え方」、特別活動は「集団や社会の形成者としての見方・考え方」とされている。
目標の冒頭に示された「見方・考え方」とそれに続いて掲げられた3つの資質・能力の関係については、各教科などに知識・技能、思考力、判断力、表現力など、学びに向かう力や人間性をバランスよく身に付け培うことによって、各教科などの「見方・考え方」が養われるという関係にある。教育課程における各教科などの位置付けや働きを「見方・考え方」が示していると捉えることができる。すなわちち、「見方」とは各教科などの持っている対象を捉える際の視点であり、「考え方」とは各教科などの持っている「考え方」を指している。
各教科などの見方・考え方を「働かせ」ることができるようにするには、どのような授業の工夫が必要か。第1に、上述したように3つの資質・能力が十分に身に付くように授業を構成・実施し、また、学習成果を観点別評価を通じて適切に把握し、学習や授業の改善に結び付けることである。第2に、各教科などの授業においてそれぞれの「見方・考え方」を「働かせ」る場面を想定することである。