第10回 高い目標を持たせる

第10回 高い目標を持たせる
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 学級開きからしばらくして、心理的安全性が確保できたとします。そして、「できる・楽しい」授業で子どもの自己評価が高まったとします。4月にこの状態になったら、今年1年間の目標を書かせます。このとき気を付けるべきは、「できるだけ高い目標」を描かせるようにすることです。現状維持を続けても達成できる目標なら、特に努力を必要としません。そうではなく、今の自分から考えると、「とんでもなく高い目標」を描かせるようにするのです。

 高い目標を描くのが難しい子には、一人ずつ教師が話を聞く時間を取ることも大切です。1日5人といった形で、1週間ほどかけて話を聞いていきます。そして、自分が心から達成したいと思える目標を考えるよう助言します。自分が好きなこと、チャレンジしてみたいことなどを思い描かせるような声掛けをします。もちろん、1年後の目標ですから、4月の段階では鮮明なイメージを持てなくても構いません。

 具体的に、学習面、生活面、人間関係の面を中心に、目標を考えるよう促します。ヒントを出してもよいでしょう。「科学が好きな人は、科学実験で大賞を取るという目標を考えたよ」「スポーツが好きな人は、競技大会で優勝するという目標を考えたよ」「友達と一緒に楽しく学んだり遊んだりするという目標を考えた人もいるよ」などと助言をしていると、「そういえば、自分は英会話ができるようになりたいと思っていた。だって海外で生活することが夢だから」などと、目標が描けるようになります。

 目標を描けたら、「1年後に目標を達成しているとして、今現在、どんな自分になっていたらいいかな」と考えさせます。そうして今現在の自分を思い描けると、「今こういう取り組みをしないと」と、目標を達成するための手だてが見えてきます。ここまでできたら、「目標を達成するためにやることを考えておいてね」と助言します。すると、手だてが自然と見えてきますから、無理なく、努力すべきことを考えられるはずです。そして、子どもたちは自然と、1年後の目標に向けて、行動するようになります。

 高い目標を教師と子どもで共有したことにも意味があります。なぜなら、子どもが描いている高い目標を共有している者として、教師が励ましの言葉掛けができるからです。しかも、目標に合わせた効果的な指導もできます。前年度まで問題行動の多かった子ほど、高い目標をイメージした後の行動変化は大きなものがあります。その成長を見取り、教師が「褒める、認める、励ます」といった前向きな言葉掛けができ、しかも指導助言も効果的にできるというわけです。(おわり)

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