「教師としての経験値が違うため、指示はできる限り具体的に行うよう意識してください」という話を本連載の第4回でしました。ただ、経験や認識の違いによるズレは、指示に限ったことではありません。
例えば、「褒める」という行為にも同じことが当てはまります。若手教師の「○○さんには褒めるところがありません」という発言は、認識の違いから来るものです。そのためにまず、「褒める」という認識の違いを指摘する必要があります。
「そうですか。褒めることがありませんでしたか。もしかしたら、成田先生は、誰もがすごいと認めるような素晴らしいことをしたときにだけ褒めるものだと思っていませんか?」
こう伝えると、声にこそ出しませんが「えっ、違うんですか?」という表情をするはずです。
「そんな大きなことではなく、『筆算をノートに書くときに定規を使っている』『給食を残さず食べた』『外で元気に遊んでいる』など、できて当たり前のように思える小さな頑張りを褒めればいいんですよ。これなら、褒めることがない…ということはなくなります」
もう少し続けます。
「子どもたちの小さな頑張りを見つけるためのコツの一つが、前にも話した『伸びたか・伸びていないか』という視点で子どもたちを見ることです。褒めることで、子どもたちの距離は縮まります。担任のことを好きになります。いいことしかありません」
この後、「教師の心得⑤褒めて、褒めて、褒めまくってください」を伝えて話を締めます。
蛇足かもしれませんが、「褒めて、褒めて、褒めまくる」ということは、「叱ってはいけない」ということではありません。私の実感で言えば、叱ることができない教師ほど、褒めることも少ない傾向があります。普段、たくさん褒めているからこそ、ここぞというときにビシッと叱ることができるのです。
褒められるとうれしくなるのは、先生も子どもも同じです。つまり、校長は担任の先生方を褒めて、褒めて、褒めまくらなければいけないということです。特に、Z世代の若い先生には多少こじつけっぽく感じても、褒めるネタを見つけて、褒めまくります。それこそ、それぞれの先生方の小さな頑張りを見つけて、褒めてください。「褒めて、褒めて、褒めまくること」で力を伸ばしていくのです。