これまで全10回を通じて、子どもたちとクラス会議に取り組むことの良さ、職員室で行う意義などについて述べてきました。これだけ先生たちの置かれた状況が厳しくなると、毎日が苦しくなってきます。でも、それをはねのける強度がクラス会議にはあります。だからこそ、私はいろいろな場所でクラス会議の良さを伝えているのです。
日本には自殺者が年間2万人以上います。これだけ食べる物や着る物、住むところや自然に恵まれている日本で、なぜこれだけの人が自ら死を選んでしまうのでしょうか。それは困ったときに「助けて」が言えないからではないでしょうか。仕事がなくなったとき、病気になったとき、「助けて」の一言が言えれば救われる人もたくさんいると思います。
私は小学校にクラス会議を取り入れることで、「助けて」と言ったらみんなが手を差し伸べてくれたという原体験ができると感じています。「お母さんが怖くて」「宿題をやりたくなくて」といった悩みに対して、周りの子どもたちが真剣に解決策を考えてくれることで、「相談してよかった」と感じることができます。この小さな繰り返しが自殺者の数を減らしていくのだと信じて、私はクラス会議を伝えています。
もう一つ、危惧しているのは投票率の低さです。2023年4月の統一地方選挙の後に、自分が教えている大学生に「投票にいった人?」と尋ねたところ、約2割しか手を挙げませんでした。これは、小・中・高校のときの経験から、自分が関与しなくても物事が進んでいくのだと誤学習しているからなのです。
沖縄県宮古島市の市立平良第一小学校では、学校を挙げて5年間、全クラスでクラス会議に取り組んでいました。私が訪れた時には、児童会役員選挙にたくさんの子が立候補していました。当時の校長先生と話をしたところ、「自分たちの学校のことは自分たちで決める」という子が多いからではないかとおっしゃっていたのがとても印象的でした。
同じ沖縄県の北谷町では、24年4月から町内の全小中学校でクラス会議を実施しています。これも自己肯定感を高めることが町の幸せにつながることに気付いたからです。私もそこに関わらせていただいており、これからどうなっていくのかがとても楽しみです。
クラス会議というのが単なる学級経営の手法の一つではなく、人づくりやまちづくり、そして国づくりにもつながっています。決して大げさな話ではなく、日本中の2割の学校でクラス会議に取り組んでもらえるようになれば、さらに幸せに生きられる子どもと先生が増えていくと思います。取り組む際にはぜひ声を掛けていただき、伴走させていただけると幸いです。(おわり)
【クラス会議成立までのスモールステップ】
その10 子どもたちの未来のために今できるワンアクションを今日行う。